佐分利信

佐分利信の生涯

佐分利信（さぶり しん、本名は石崎由雄）は、1909年に北海道空知郡歌志内村に生まれました。父は炭鉱夫として夕張炭田で働いており、彼自身も子ども時代から様々な経験を重ねました。1923年に小学校を卒業後は、上京して中学教師を目指しましたが、生活費を稼ぐために肉体労働をしながら正則英語学校に通います。その後、映画の世界に魅了され、俳優を志すことになります。

1929年、彼は日本映画俳優学校に入学し、翌年には日活に入社しました。デビュー作は内田吐夢監督の『日本嬢』で、当時の演技スタイルに新たな風を吹き込む朴訥とした演技が話題となりました。その後、1932年には黒木しのぶと出会い、彼女と結婚します。彼は愛妻家であり、仕事の前には必ず握手を交わすなど愛情を深めました。

松竹での活躍

1933年に日活を退社し、松竹入りを果たします。松竹では、五所平之助や島津監督とのコラボレーションにより、彼の演技がますます磨かれていきました。1936年には島津監督の『家族会議』に主演し、これが大きな注目を集めました。また、『男女対女性』や『婚約三羽烏』といった作品は、彼の人気を決定づけるものとなりました。

戦争の影響で戦時中は知的な青年役に多く起用され、1944年の『暖流』や『戸田家の兄妹』では、その演技力が光りました。戦後も松竹に残りメロドラマに出演し続けましたが、なかなか目立つ役には恵まれず、時期的には厳しい時期もありました。

監督業への挑戦

1948年から監督業に進出し、1950年には『女性対男性』を発表しました。これを皮切りに、社会派の作品を数多く手掛け、1950年代には『執行猶予』『風雪二十年』『慟哭』といった高評価を受ける作品を制作し、名監督としての地位を確立します。1953年には健康を損なう事故があり、一時期は監督業から離れざるを得ませんでしたが、その後『心に花の咲く日まで』で再起し、映画界へ復帰します。

テレビドラマ時代

1961年からはテレビドラマに進出し、様々な作品で新たな存在感を発揮しました。1973年には熊井啓監督の『朝やけの詩』で映画に復帰し、1974年の『華麗なる一族』では強いキャラクターを演じ、観客に深い印象を与えました。彼の晩年にはテレビドラマの『阿修羅のごとく』で父親役を演じ、多くの視聴者に親しまれました。

最後の日々

私生活では妻の黒木しのぶを1964年に亡くし、その悲しみは彼の心に影を落としました。1982年9月22日、肝臓癌との闘いの末、彼は73歳でこの世を去りました。彼の作品や演技は、その後も多くの人々に記憶されることとなります。彼の墓所は小平霊園にあり、ゆかりの地で静かに眠っています。佐分利信は、二枚目俳優としての渋みある演技と、監督としての社会的視点をもった作品で、昭和の日本映画界に大きな足跡を残しました。

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