佐柳島沖海保ヘリ墜落事故

佐柳島沖海上保安庁ヘリコプター墜落事故

2010年、香川県多度津町佐柳島沖において、第六管区海上保安本部所属のヘリコプターが墜落する事故が発生しました。この事故は、日本の航空事故史において、大きな衝撃を与えました。本記事では、事故の概要から原因究明、そしてその後の対応までを詳細に記述します。

事故の概要

事故に遭ったのは、広島航空基地に所属するヘリコプター「あきづる」(機体記号:JA6796、所属記号:MH796)でした。「あきづる」は、2007年11月に鹿児島航空基地から広島航空基地へ配置換えされ、2008年3月に愛称が変更された機体でした。事故当日、同機は広島航空基地を離陸し、瀬戸内海のパトロールとデモンストレーション飛行の任務に就いていました。

パトロール業務の合間に、香川沖を航行していた司法修習生乗船の船舶に対してデモンストレーション飛行を実施。2度目のデモンストレーション飛行に向かう途中、低空飛行中の15時10分頃、佐柳島と隣の小島を結ぶ送電線に接触、そのまま海面に墜落、大破沈没しました。搭乗していた乗員5名全員が殉職するという、痛ましい事故となりました。目撃証言によると、事故機は送電線に接触した後、上昇を試みたものの、逆さまにひっくり返り、海中に墜落したとのことです。

事故原因とその後

事故原因については、乗員全員が死亡したため断定されていませんが、機長と副操縦士が送電線を認識していなかったこと、航空障害灯を視認していなかったことが、大きな要因として推測されています。

この事故では、第六管区海上保安本部の対応にも批判が集中しました。事故発生当初、同本部は事故を通常のパトロール業務として説明し、デモンストレーション飛行について公表しませんでした。しかし、後にデモンストレーション飛行を実施していたことが発覚し、「隠蔽」の疑いをかけられ、説明責任を果たしていないとして、マスコミから強い批判を受けました。

その結果、国土交通大臣は、第六管区海上保安本部長と次長を更迭するという人事異動を発令しました。事故機の残骸は引き揚げられ、広島航空基地で保管された後、2012年に解体されました。広島航空基地では、事故の風化防止のため、「あきづる」の識別板を保存展示する検討が行われています。

教訓と今後の課題

佐柳島沖海上保安庁ヘリコプター墜落事故は、多くの教訓を残しました。送電線などの航空障害物の認識の重要性、安全管理体制の徹底、そして、事故発生後の情報公開のあり方など、様々な課題が浮き彫りとなりました。この事故を教訓に、日本の航空安全管理体制は更なる強化が求められています。事故の背景には、過酷な労働環境や、パイロットの負担の大きさなどもあったと考えられています。今後、このような事故を二度と起こさないためには、関係機関による更なる安全対策の推進と、パイロットの負担軽減のための取り組みが不可欠です。この事故は、日本の航空安全の歴史における重要な転換点となり、今後の安全対策に大きな影響を与えました。

関連情報

国土交通省運輸安全委員会
海上保安庁広島航空基地

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