佐竹三吾

佐竹三吾：鉄道官僚から実業家へ、激動の生涯

佐竹三吾（さたけ さんご）は、1880年（明治13年）3月5日に生まれ、1976年（昭和51年）5月24日に没した、明治末から昭和期にかけての鉄道官僚、政治家、そして実業家です。その生涯は、日本の近代化と激動の時代を反映しており、多岐にわたる分野で足跡を残しました。

若き日の研鑽と官僚としてのキャリア

岐阜県出身の佐竹は、米穀商の家に生まれましたが、後に佐竹鉄治郎の養子となります。岐阜中学、城北中学、第一高等学校を経て、1905年（明治38年）に東京帝国大学法科大学法律学科を優等で卒業。銀時計を授与されるほどの秀才でした。卒業後は農商務省に入省し、法制局参事官、満鉄理事などを歴任。1908年（明治41年）からは欧米へ留学し、見識を広めました。1912年（明治45年）には鉄道院に入り、鉄道畑を歩み始めます。監督局総務課長、鉄道院理事、鉄道省監督局長などを歴任し、鉄道行政の中枢を担いました。また、1919年（大正8年）には、「再保険論」で法学博士号を取得しています。

法制局長官、貴族院議員としての活躍

1922年（大正11年）には、大阪市電気局長に転じ、行政手腕を発揮。1924年（大正13年）には、清浦内閣で法制局長官に就任し、短期間ながらもその手腕を発揮しました。同年6月には貴族院勅選議員に勅任され、研究会に所属し、1932年（昭和7年）まで活動しました。また、1926年（大正15年）には第1次若槻内閣で鉄道政務次官を務め、鉄道行政に携わりました。

越後鉄道疑獄事件と失脚

しかし、順風満帆に見えた佐竹のキャリアに暗雲が立ち込めます。1929年（昭和4年）に越後鉄道疑獄事件に関与したとして逮捕され、有罪判決を受けます。この事件により、従四位を返上し、勲三等や大礼記念章も褫奪されるという不名誉な結果となりました。この事件は、佐竹のその後の人生に大きな影響を与えることとなります。

実業界での再起と晩年

失脚後、佐竹は実業界で再起を図ります。大阪鉄道株式会社社長や大鉄百貨店社長などを務め、経営者としての手腕を発揮しました。特に、大阪鉄道株式会社社長時代には、経営危機にあった浪華高等商業学校（現大阪経済大学）の再建に尽力し、関西財界からの協力を取り付けました。戦後は1953年（昭和28年）の第3回参議院議員通常選挙に自由党公認で立候補しましたが、落選しました。晩年は阪急バス社長、日東産業社長を歴任し、波乱に満ちた生涯を終えました。

著訳書

佐竹は、著述活動にも意欲的でした。

著書
『保險法』（中央大学、1909年）
『大鐵全史』（近畿日本鉄道、1952年）
訳書
* バートン著『財界恐慌論』（清水書店、1926年）

親族

佐竹の親族には、司法省監獄局長を務めた久保田貫一（義父）や、大蔵省銀行局長を務めた佐竹浩（二男）がいます。

佐竹三吾の生涯は、官僚、政治家、実業家という多岐にわたる顔を持ち、激動の時代を生き抜いた人物でした。その功績と挫折は、現代に生きる私たちにも多くの教訓を与えてくれます。

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