佐藤信寛

佐藤信寛について

佐藤信寛（さとう のぶひろ）は、文化12年12月27日（1816年1月25日）に生まれ、明治33年（1900年）2月15日に亡くなった、江戸時代後期から明治時代にかけての長州藩士、政治家です。幼名は三郎、後に寛作と名乗り、諱を信寛としました。号は蝦洲、正五位に叙されています。佐藤家第10代当主であり、子孫には内閣総理大臣を務めた岸信介・佐藤栄作兄弟や、同じく内閣総理大臣を務めた安倍晋三がいます。

生涯

現在の山口県熊毛郡田布施町で、長州藩士・佐藤源右衛門の長男として生まれました。藩校明倫館で学び、山県太華に師事。江戸では清水赤城から長沼流兵学を学び、吉田松陰には兵要禄を授けました。井上馨や伊藤博文、木戸孝允らとも親交があったとされています。

藩内では郡奉行筆者役を務め、海防手当方郡奉行所などを歴任しました。明治維新後には、浜田県権知事、島根県令などを務め、地方行政に貢献しました。明治11年（1878年）頃に官を退き、故郷の熊毛郡麻郷村戎ヶ下（現在の田布施町）で閑居し、多くの詩や手記を残し、余生を過ごしました。享年84歳で亡くなり、田布施のひろみが丘に葬られました。菩提寺は浄土真宗真光寺です。

人物像

明治9年（1876年）には、県令として萩の乱の首謀者である前原一誠らを逮捕しました。曾孫である佐藤栄作は、自伝『今日は明日の前日』の中で、曽祖父である信寛について「毛利家の家臣で、当時の革新派であった」と述べています。また、明治維新後には島根県の県令になったことにも触れています。

長男の信彦とは必ずしも円満な関係ではなかったようで、次男の包武を最も可愛がり、自身の資産や記念品類を全て与えました。しかし、包武が継いだ鼓家の人々は佐藤家にあまり関心がなく、記念品類は次々と売り払われてしまったといいます。

官職を退いた後は、戎ヶ下の別荘で「蝦洲」と号し、悠々自適の生活を送りました。別荘には、有栖川宮熾仁親王や伊藤博文などが訪れた記録が残っており、特に伊藤博文が残した漢詩は今日まで伝えられています。

家族・親族・家系

長男：信彦（漢学者、山口県議）
次男：包武（陸軍少尉、鼓家を継ぐ）
三男：太郎（陸軍少佐、井上光家の家督を継ぐ）
孫：佐藤松介（医師）、佐藤寛造（医師）、池上作三（医師）、茂世、さわなど
曾孫：佐藤市郎（海軍軍人）、岸信介（官僚、政治家・首相）、佐藤栄作（政治家・首相）、佐藤寛子（栄作の妻）
玄孫：安倍洋子（岸信介の長女、安倍晋太郎の妻）、佐藤信二（政治家）
来孫：安倍寛信（三菱商事パッケージング社長）、安倍晋三（政治家、首相）、岸信夫（政治家）
昆孫：安倍寛人（寛信の子）、岸信千世（信夫の子、衆議院議員）

関連人物

伊藤博文：長州藩出身の政治家。初代内閣総理大臣。
井上馨：長州藩出身の政治家。五代井上財閥を築いた。
吉田松陰：長州藩の思想家。松下村塾を主宰した。

参考文献

吉本重義 『岸信介傳』 東洋書館 1957年
神一行 『閨閥 ―特権階級の盛衰の系譜―』角川書店 2002年
山際澄夫『安倍晋三物語』恒文社21、2003年

佐藤信寛は、激動の時代を生き抜き、その子孫が日本の政治の中枢で活躍する礎を築いた人物と言えるでしょう。

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