佐藤恒久

佐藤恒久（さとう つねひさ）

佐藤恒久は、文久2年（1862年）に生まれ、明治40年（1907年）に没した、明治時代の日本の外科医です。彼は順天堂医院の副医院長を務めました。

生涯

佐藤恒久は、文久2年（1862年）7月に武蔵国江戸（現在の東京都区部）で、安房国花房藩士である松下信久の四男として生まれました。明治6年（1873年）に父と死別し、兄の松下道久のもとで育ちました。明治9年（1876年）に東京外国語学校に入学し、翌明治10年（1877年）に東京大学医学部予科に入学しました。明治19年（1886年）に学制変更により東京帝国大学医科大学となった年に卒業しました。

東京帝国大学医科大学卒業前に、陸軍軍医総監の佐藤進の養女である佐藤梅尾と結婚し、婿養子となりました。彼の同級生には、千葉医科大学学長となった三輪徳寛、養生会を創設した伊東重、陸軍軍医として台湾でペスト菌を確認した岡田国太郎、長崎医科大学耳鼻咽喉科の創始者である高畑挺蔵、名古屋大学外科部長を務めた花房道純・小川三之助などがいました。

大学卒業後、佐藤恒久はドイツに留学し、ベルリン大学で眼科教授のユリウス・ヒルシュベルクらに師事し、婦人科についてはハッレ大学病院産婦人科のロベルト・オルスハウゼンらに学びました。明治24年（1891年）7月に帰国し、一時的に東京帝国大学医科大学大学院に籍を置きましたが、明治27年（1894年）に再びドイツに留学し、3年間外科を専攻しました。明治30年（1897年）に帰国後は、順天堂医院の副医院長として婦人科および外科を担当しました。

明治30年（1897年）11月には、三輪徳寛、木村孝蕨、田代正医師の送別会が上野精養軒で行われました。その席で、日本外科学会創立についての話し合いが行われました。田代義徳、近藤次繁、佐藤恒久が日本外科学会規則草案を起草し、同年12月には協議会が開かれ、明治31年（1898年）4月7日に神田青年会館で発起人会が開かれました。発起人会では、近藤次繁が本会設立の由来を説明し、翌年4月に第1回日本外科学会を東京で開催することを決定しました。また、第1回役員選挙の結果、会長に佐藤三吉、幹事に近藤次繁、田代義徳、佐藤恒久が選ばれました。

佐藤恒久が亡くなる前年の明治39年（1906年）には、自身が担当していた順天堂医院の改築が完了し、木造モルタル3階建ての建物が竣工しました。彼の墓所は文京区の吉祥寺にあります。

主な論文・著作

「中外医事新報(205) 1888年10月 人工早產ノ實驗 佐藤恆久 p6〜8」
「中外医事新報(206) 1888年10月 人工早產ノ實驗 佐藤恆久 p9〜11」
「中外医事新報(274) 1891年8月 初生兒膿漏症ノ豫防法ニ就テ 佐藤恒久 p4〜6」
「中外医事新報(276) 1891年9月 初生兒膿漏症ノ豫防法ニ就テ 佐藤恒久 p24〜26」
「中外医事新報(315) 1893年5月 腹壁切開術ニ就テ 佐藤恒久 p1〜3」
「順天堂医事研究会報告(53) 不姙症ノ說 佐藤恆久 p226〜230」
「順天堂医事研究会報告(54) 不姙症ノ說 佐藤恒久 p285〜289」

家族

実父: 松下信久（安房花房藩士）
実兄: 松下道久
義父: 佐藤進 (第3代順天堂医院長、陸軍軍医総監、男爵)
義母: 佐藤志津 (女子美術学校長)
妻: 佐藤梅尾
養子: 佐藤清一郎 (順天堂大学外科部長、東京医科大学外科教授。日本で最初の肺癌切除手術を行った)
義弟: 佐藤達次郎 (第4代順天堂医院長、学校法人順天堂医科大学初代学長・初代理事長、貴族院議員、男爵)

参考文献

* 「医事新聞729 明治40年3月10日 医学士佐藤恒久氏逝去P79〜80」（医事新聞社）

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