余天

余 天（よ てん）

中華民国（台湾）で、国民的な歌手、俳優、司会者として長年活躍し、その後は政治家としても重要な役割を担った多才な人物です。本名は余清源（ユー ティエン）。1948年3月1日に新竹市で生まれました。

芸能活動

5男1女の6人兄弟の長男として育った余天は、学生時代に陸上競技の選手としても才能を示しましたが、1964年に歌手としてデビューしました。そのキャリアの中で、日本の楽曲「北国の春」をカバーした「榕樹下（ガジュマルの木の下）」が特に有名になり、多くの人々に親しまれました。

歌手活動にとどまらず、テレビ番組の司会や、ドラマ、映画にも多数出演するなど、エンターテイナーとして幅広く活動しました。長年にわたり第一線で活躍した後、2016年末には歌手としての引退コンサートを開催し、一つの区切りをつけました。

主な出演

テレビ番組司会

綜藝兵團（台視、1980）
天天星期天（中視、1986）
台灣開心秀（華視、2005）
台灣演歌秀（八大第一台、1999～2004）
台灣的歌（八大第一台、2004）

テレビドラマ出演

碎心戀（台視、1971） - 白小斌 役
今夜作夢也會笑（中視、1995） - 陳桑 役
好美麗診所（東森綜合台、2005） - 院長 役

映画出演

天字第一號第3集金雞心（1965）
天涯俠侶（1966）
西貢無戰事（1967） - 林杰民 役
孩子王（1989） - 隊長 役
阿呆（1992） - 林董 役

政治活動

芸能界での成功を経て、余天は社会活動や政治にも関わるようになります。2005年には台湾文化演芸推展協会の理事長、2006年から2013年にかけては全国芸能総工会（労働組合）の理事長を務め、芸能関係者の権利向上などに尽力しました。

その後、政界への進出を果たし、民主進歩党に所属しました。2008年の第7回立法委員選挙では、台北県第三選挙区から出馬して初当選を果たします。2012年の第8回選挙では、比例代表名簿の14位で再選を目指しましたが、党の獲得議席が13議席だったため惜しくも落選しました。しかし、2016年には民主進歩党新北市党部の主任委員に就任するなど、党務にも携わりました。

2018年末、収賄罪による現職議員の失職に伴い行われた新北市第三選挙区の補欠選挙に出馬し、当選して立法委員に復帰しました。続く2020年の第10回選挙でも再選を果たし、議員活動を継続しました。2024年の第11回選挙では再選を目指さず、後継候補を支援し、同年1月末の任期満了をもって立法委員を退任し、政界での第一線から退きました。

家族

余天は、歌手、女優、司会者として活躍する李亜萍と1978年に結婚し、1男2女をもうけました。長女の余筱萍と長男の余祥銓もタレントとして活動しており、長男はかつて余天の立法委員補佐官を務めた経験もあります。

家族に関しては、困難な出来事も経験しています。彼の弟の一人は1992年の火災で亡くなり、また別の弟は中国での麻薬密輸により2006年に死刑執行されました。末弟の余帝も元歌手で、一時他の政党に所属していましたが、後に民主進歩党に入党しています。

さらに、2022年8月には、大腸癌を患っていた次女の余苑綺さんが39歳という若さで亡くなるという悲劇に見舞われました。その葬儀には多くの関係者や支持者が参列し、娘の死を悼みました。

国民的なエンターテイナーとして長年愛され、さらに政界でも実績を残した余天は、公私にわたり波乱に富んだ人生を歩んできました。その多岐にわたる活動と経験は、台湾社会において特別な存在感を放っています。

主な音楽アルバム

羅馬離情（1966）
榕樹下（1979）
回鄉的我（1990）
天生多情（台湾語・北京語、2000）
台灣有愛（2011）
* 你的人生（2013）

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