民主進歩党

民主進歩党：台湾の政党政治を彩る緑の勢力

民主進歩党（DPP）は、台湾における主要政党の一つであり、国民党と二大[[政党制]]を形成しています。その歴史は、国民党の一党独裁体制下にあった1986年に、民主化を求める党外勢力によって結党されたことに始まります。当初は非合法政党でしたが、1989年に合法化されると、国民大会、立法院、地方議会などで徐々に勢力を拡大し、台湾の民主化に大きな役割を果たしました。

激動の歩み：野党から与党へ、そして再び野党へ

結党当初から、DPPは国民党との対立軸を明確に打ち出しました。党綱領に「台湾共和国の建設」を掲げ、台湾独立問題を主要な政策課題として位置づけていました。しかし、1990年代後半からは、社会福祉や環境保護、人権など、よりリベラルな主張を重視するようになり、台湾独立問題に関するスタンスは幾分軟化しました。

2000年、陳水扁の総統当選により、DPPは初めて政権を獲得しました。これは半世紀にわたる国民党の支配に終止符を打つ歴史的な出来事でした。しかし、陳水扁政権下では汚職スキャンダルなどが発生し、2008年の総統選挙で国民党に敗れ、政権を失いました。

その後、蔡英文の党首就任の下、党再建に努めたDPPは、2016年と2020年の総統選挙で蔡英文を当選させ、再び政権を獲得しました。2024年の総統選挙では頼清徳が当選し、同じ政党による3期連続政権が実現しましたが、立法院では過半数を維持できませんでした。

複雑な党内構造：派閥抗争と政策決定

DPPは、その成り立ちから、多様な派閥が存在する複雑な党内構造を持っています。結党当初から「美麗島系」「新潮流系」といった主要派閥が存在し、その後も様々な派閥が形成・分裂を繰り返してきました。これらの派閥は、党内権力闘争だけでなく、政策決定にも影響を与えてきました。

主な派閥としては、現在も影響力を持つ「新潮流系」「英系（蔡英文派）」「正国会」「蘇系」「海派」「緑色友誼連線」などがあります。それぞれの派閥は、歴史的背景やイデオロギー、指導者などに違いがあり、党内での勢力争いは常に激化しています。

支持基盤の変容：都市型リベラル政党からの転換

DPPは、当初は国民党の独裁体制下で民主化運動を担っていた草の根運動を基盤としていました。しかし、近年はLGBTや脱原発、ジェンダー平等などに重点を置く都市型リベラル政党としての側面が強まっています。

この変化は、若者層を中心に、「理念よりも生活問題の解決を優先すべき」という声の高まりにつながり、2024年の総統選挙における若年層の支持率減少の一因となりました。また、中国との関係性についても、既存の二大政党への不満から、中道的な第三勢力が台頭する要因の一つとなっています。

歴史の重みと未来への展望

DPPは、台湾の民主化と独立という大きな歴史的課題を背負って歩んできました。党内派閥の抗争や支持基盤の変化、中国との複雑な関係など、多くの困難に直面しながらも、台湾の政治において重要な役割を果たし続けています。今後のDPPの動向は、台湾の未来を左右する重要な要素となるでしょう。

参考文献

丸山勝『陳水扁の時代』(藤原書店)
柳本通彦『台湾革命』(集英社新書)
若林正丈『台湾-変容し躊躇するアイデンティティ』(ちくま新書)
若林正丈 『台湾の政治―中華民国台湾化の戦後史』(東京大学出版会)

もう一度検索