使徒座空位

使徒座空位

使徒座空位（Sedes vacans）とは、ローマ・カトリック教会において、教皇が死去または退位し、その地位が空位となっている状態を指す教会法上の用語です。日本語では「教皇空位」とも呼ばれます。

暫定統治

使徒座空位が発生すると、新たな教皇が選出されるまでの間、枢機卿団が集団指導体制のもとでバチカンを統治します。ただし、この枢機卿団の権限はあくまで暫定的であり、日常業務の遂行や、新教皇選出まで延期できない案件の処理に限定されます。

使徒座空位に伴い、国務長官をはじめとするローマ教皇庁の各聖省長官や評議会議長は、原則としてその職務から一旦解任されます。ただし、カメルレンゴ、内赦院長、サン・ピエトロ大聖堂首席司祭枢機卿、バチカン市国総代理枢機卿は例外です。

教皇を選出するための枢機卿による会議、コンクラーヴェが開催されます。新教皇が選出されると、解任されていた長官や議長は再任されるのが通例です。

教皇ベネディクト16世は退位直前にコンクラーヴェの規則を一部変更し、投票権を持つ枢機卿が全員揃った場合、コンクラーヴェの日程を前倒しして開催することを許可しました。

使徒座空位の間には、カメルレンゴを長とする使徒座空位期間事務局が設置され、使徒座空位期間のみ使用できる切手や通貨を発行する権限を持ちます。

紋章

使徒座空位の間は、教皇の紋章の代わりに、傘（ウンブレラ）と聖ペトロの鍵を組み合わせた使徒座空位の紋章が用いられます。

長期間にわたる使徒座空位

通常、コンクラーヴェは比較的短期間で終了しますが、歴史上、数ヶ月から1年以上にわたって使徒座空位の状態が続いた時期もありました。

空位期間が1年以上の時期の例：

1268年 - 1271年
1292年 - 1294年
1314年 - 1316年
1415年 - 1417年

1799年以降の使徒座空位

1799年 - 1800年 (ピウス6世の死去)
1829年 (レオ12世の死去)
1830年 - 1831年 (ピウス8世の死去)
1846年 (グレゴリウス16世の死去)
1878年 (ピウス9世の死去)
1903年 (レオ13世の死去)
1914年 (ピウス10世の死去)
1922年 (ベネディクトゥス15世の死去)
1939年 (ピウス11世の死去)
1958年 (ピウス12世の死去)
1963年 (ヨハネ23世の死去)
1978年 (パウロ6世の死去)
1978年 (ヨハネ・パウロ1世の死去)
2005年 (ヨハネ・パウロ2世の死去)
2013年 (ベネディクト16世の退位)

教皇座空位論

「Sedes vacans」という語は、カトリック伝統主義の中でも極端な立場である教皇座空位論（Sedevacantism）にも見られます。教皇座空位論者は、第2バチカン公会議以降の教皇は異端であるため、教皇座は空位であると主張します。

関連項目

コンクラーヴェ

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