使者

使者（ししゃ）

使者とは、依頼や命令を受けて、それを他の人へ伝える役割を果たす者を指します。特に日本の戦国時代には、上級者が作成した書状を持って相手のもとに赴く存在であり、その役割は非常に重要でした。

歴史的背景

近代の通信手段が発明される前、情報のやり取りは主に書状や口頭で行われていました。特に戦国時代は外交が非常に活発であったため、重要な情報は使者を通じた口頭による伝達が好まれました。書状による伝達には多くのリスクが伴い、例えば書状の奪取や紛失による情報流出の危険性があります。また、書状が偽造される可能性も否定できません。さらに、遠方での出来事の変化により、書状のみでは迅速な対応が難しい場合があるため、使者の存在が不可欠でした。

これらの理由から、戦国時代の大名たちはまず簡単な書状を作成し、その内容を使者に記憶させて相手に送りました。書状には「委細については彼に聞いてください」と明記することで、詳細事項の確認を使者に委ねる形が取られました。使者が選ばれる際には、相手の大名や家臣と面識がある者が任命され、赴いた先での状況に応じて、自ら判断した外交活動を行うことも許されていました。この点において、使者は単なる伝達者という役割を超え、代理人のような機能を果たしました。

使者の伝達手法

伝達は通常、送り元から使者に覚書として内容が記され、使者は相手先に到着した後、その内容を確認した上で書状として示す方法が主流でした。こうすることで、書状だけでは解決できない問題を回避することが可能になりました。しかし、時代が進むにつれて、大名の領国が拡大し、発行される書状の数が増えることで、新たな問題も生じました。

使者は、相手先と交渉を行えるだけの家格や能力を持ち、送り先に面識があり、さらには遠方への往復ができる体力を有する者でなければなりません。さらに、途中で妨害に遭うリスクも考慮しなければなりません。こうした条件から、大名の中でも一定数しか使者としてふさわしい人材は存在しませんでした。そのため、次第に書状に詳細な内容を記載する事例が増えていったのです。

様々な使者の選任

使者の選定は難しいため、様々な人材が登用されました。特に僧侶は、その知識や行脚の経験から通常の使者としてだけでなく、密使の任務も受けることがありました。また、使者の役割は使番（使者を指揮する者）と重なる部分もあり、他の大名への使者は、限られた大身層の者や側近がその責任を担うことが一般的でした。

このように、使者は戦国時代において、情報伝達の重要な役割を果たしながら、外交活動の中で重要な存在として位置づけられていました。

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