俊堯

俊堯（しゅんぎょう）

俊堯は、平安時代末期の僧侶であり、第58世天台座主を務めた人物です。俗名は源顕智といい、神祇伯源顕仲の子として元永元年（1118年）に生まれました。比叡山東塔の五智院に住み込み、大僧都の相源や清高に師事し、僧侶としての道を歩みました。

波乱に満ちた出世

永万元年（1165年）には、「弁阿闍梨」と呼ばれていた俊堯は、弟子の不祥事により夜間に山を下り、検非違使の家に向かうという事件を起こしています。この事件は、当時の社会においても僧侶の行動が厳しく監視されていたことを示唆しています。嘉応2年（1170年）には法印に任じられましたが、九条兼実はその人事に不審を抱き、「世上不レ為レ可云々、併莫レ不レ驚二耳目一」と日記『玉葉』に記しています。さらに、寿永元年（1182年）に僧正に昇進した際も、兼実は「奇異」と評しており、当時の人々にとって俊堯の出世が異例であったことが伺えます。

源義仲との関係

源義仲が京都に入ると、俊堯は義仲に接近しました。義仲は、自らが擁立する北陸宮（以仁王の第一王子）を天皇に立てようと考え、俊堯に後白河法皇への取り成しを依頼しました。しかし、後白河法皇はこれを完全に無視し、高倉天皇の第四皇子である尊成親王が後鳥羽天皇として即位することになります。寿永2年（1183年）11月、義仲が後白河法皇のいる法住寺殿を襲撃しクーデターを起こした際、法住寺殿に居合わせた天台座主明雲が殺害されました。この混乱の中で、義仲は俊堯を新たな天台座主に据えました。

短命に終わった天台座主

しかし、義仲の意向で強引に天台座主となった俊堯は、比叡山の衆徒からの信望を全く得ることができませんでした。元暦元年（1184年）1月、義仲が敗死すると、俊堯はすぐに比叡山を追われることになり、在位期間はわずか一ヶ月という短さでした。文治2年（1186年）3月25日、俊堯は京都の勘解由小路京極房で69歳で亡くなりました。俊堯の生涯は、武士の台頭と朝廷・寺社の権力闘争が激化した平安時代末期の動乱を象徴するものでした。彼の人生は、時の権力者に近づき、その影響力を行使しようとした人物が、最終的には人々の支持を失い、歴史の波に翻弄される様子を如実に示しています。

俊堯の生涯は、平安末期の社会情勢と宗教界の混乱を反映しており、当時の権力闘争と人々の価値観の変化を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。

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