保坂俊司

保坂 俊司（ほさか しゅんじ）

保坂俊司氏は、1956年に群馬県渋川市で生まれた日本の宗教学者です。現在は中央大学の教授を務める傍ら、比較文明学会の会長としても学術活動を牽引しています。その専門分野は多岐にわたり、比較宗教学、比較文明論をはじめ、インド思想、仏教学、宗教学、哲学といった広範な領域をカバーしています。異なる宗教や文明の比較研究を通じて、世界の多様な文化や思想の本質に迫る研究を行っています。

保坂氏の学歴は、早稲田大学社会科学部を卒業したことから始まります。さらに学術的な深みを追求するため、同大学大学院文学研究科に進学し、東洋哲学を専攻しました。1991年には修士課程を修了し、研究者としての基礎を固めます。その後、インドに渡り、デリー大学において研鑽を積むことで、自身の主要な研究対象であるインド思想や仏教に対する造詣を深めました。

キャリアの初期には、グル・ナーナク研究所で研究員を務めた後、麗澤大学国際経済学部に移り、専任講師、助教授、教授として教育と研究に従事しました。2009年からは中央大学に移籍し、総合政策学部の教授として現在に至ります。中央大学においては、学部の教育研究活動に加え、新たに国際情報学部が設置される際には、その準備と創設に貢献するなど、大学の発展にも深く関与しています。

研究者としての保坂氏の功績は、その幅広い研究テーマと精力的な著作活動に表れています。単に特定の宗教や思想を掘り下げるだけでなく、比較という視点を重視することで、宗教や文明が持つ普遍性と特殊性を明らかにしようとしています。インド仏教の衰退理由をイスラーム史料から考察したり、イスラームと現代社会の課題（原理主義、テロリズム、格差など）との関連性を論じたりと、歴史と現代を結びつける研究も行っています。また、宗教と国家、宗教と経済、宗教と情報といった、現代社会が直面する複雑な問題に対する宗教的視点からの分析も重要なテーマです。世界の主要な宗教（ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、仏教など）に関する啓蒙書も多く執筆しており、専門知識を広く一般に伝える活動にも力を入れています。

保坂氏の主な著作には、以下のようなものがあります。

『シク教の教えと文化 大乗仏教の興亡との比較』（平河出版社）
『イスラームとの対話』（成文堂選書）
『インド仏教はなぜ亡んだのか イスラム史料からの考察』（北樹出版）
『イスラム原理主義・テロリズムと日本の対応 宗教音痴日本の迷走』（北樹出版）
『仏教とヨーガ』（東京書籍）
『知識ゼロからの世界の三大宗教入門』（幻冬舎）
『戒名と日本人 あの世の名前は必要か』（祥伝社新書）
『国家と宗教』（光文社新書）
『宗教の経済思想』（光文社新書）
『ブッダとムハンマド 開祖でわかる仏教とイスラム教』（サンガ新書）
『癒しと鎮めと日本の宗教』（北樹出版）
『「格差拡大」とイスラム教』（プレジデント社）
『グローバル時代の宗教と情報　文明の祖型と宗教』（北樹出版）
『インド宗教興亡史』（ちくま新書）
* 『仏教興亡の秘密　仏教を導いた語りえぬものについて』（ぷねうま舎）

これらの単著に加え、複数の共著、編著、監修書を出版しており、『世界の宗教問題の基本 2時間でザックリわかる!』などを編著としています。また、翻訳書としてマハトマ・ガンジーの著作や、グリンダル・シン・マンによる『シク教』の日本語版を世に送り出すなど、海外の重要な文献を日本に紹介する役割も果たしています。

保坂氏の研究と著作は、宗教や文明間の相互理解が喫緊の課題となっている現代社会において、異なる文化や思想体系に対する深い洞察を提供し、多様な価値観が共存する社会を考える上での重要な示唆を与えています。比較宗教学・比較文明論の第一人者として、今後のさらなる活躍が期待されています。

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