信州路

信州路（しんしゅうろ）

信州路は、中国の江西省上饒市一帯にかつて存在した地域であり、元朝時代に設立されました。この地域は大元ウルスの時代に重要な役割を果たし、行政区分の一部として機能していました。治所は上饒県に置かれ、江浙等処行中書省に属していました。これは、信州路が当時の政治的・経済的な中心地としての役割を担っていたことを示しています。

歴史的背景

信州路の歴史は唐代にまでさかのぼることができます。モンゴル帝国の第5代皇帝であるセチェン・カアン（クビライ）が南宋を征服した後の1276年（至元13年）、信州地域はカサル家の領土として割り当てられました。この大元ウルスの下で、信州路は江南地域の東方に位置し、カサル・ウルスの遊牧本領とも近接していました。これにより、信州路はカサル家にとって重要な地域となったのです。

特に、カサル家の統治を担当した人物、ブラルキは非常に重視されていました。彼は「斉王（カサル家当主）」の下で司馬を務めた後、信州路のダルガチに任命されました。ブラルキの任命は、カサル家がこの地域における統治を非常に重要視していたことを意味します。また、1282年（至元18年）には、カサル家の傍系王族である伯帖木児に信州路の408戸の民が与えられたという記録があります。これにより、信州路の住民たちはカサル家内で定期的に細分化され、相続される様子が窺えます。

しかし、1360年に朱元璋によって信州路は改名され、広信府となったことからも、この地域の政治的変遷がうかがえます。

行政構造

信州路は、行政機関として「録事司」が設置され、5つの県が管理されていました。これらの県は上饒県、玉山県、弋陽県、貴渓県、永豊県で構成されています。それぞれの県は、地域ごとの行政を担当し、さまざまな業務を遂行していました。

• - 上饒県：信州路の中心的存在であり、政治・経済の中心地でした。
• - 玉山県：風光明媚な山岳地帯に位置し、農業が盛んでした。
• - 弋陽県：水資源が豊富で、漁業も発展していました。
• - 貴渓県：貴重な鉱山資源がある地域です。
• - 永豊県：農業と商業の中心として重要だった地域。

信州路は、カサル・ウルスの影響を受けながらも独自の文化と経済を繁栄させていきました。モンゴル帝国の拡大の中で、信州路はその戦略的な位置を利用して、さまざまな商業活動や文化的交流が行われていました。

参考文献

信州路の詳細は、以下の文献から情報を得ることができます。

• - 植松正『元代江南政治社会史研究』（1997年）
• - 杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』（2004年）
• - 村岡倫「元代江南投下領とモンゴリアの遊牧集団」（1997年）

信州路はモンゴルの支配下にあった地域として、その歴史や文化を知る上で非常に興味深い存在です。

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