信方

信方（のぶかた）は、生没年不詳ながら、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍したとされる、初期洋風画の画家です。彼の作品は、16世紀ヨーロッパで流行したマニエリスムの影響を色濃く受けており、テンペラ画の技法を用いて描かれています。しかし、同時代の文献には彼の名前が記録されておらず、その経歴の多くは謎に包まれています。

信方が活躍したと考えられるのは、慶長年間（1596年-1615年）を中心とした時期です。現存する作品には、「獅子と鷲」の印章と「信方」または「信水」「信芳」といった落款が見られます。これらの印章や落款は、彼の作品を特定する上で重要な手がかりとなっています。

信方の作品には、仏教を主題としたものも含まれています。例えば、日蓮宗の僧侶である日教の肖像画などが知られています。これらの作品から、彼がキリスト教の洗礼を受け、セミナリオなどで洋画を学んだ後、棄教した人物ではないかという説を唱える研究者もいます。この説は、当時の日本の宗教的な状況と、西洋文化との接触を考慮する上で興味深い視点を提供しています。

現存する信方の主な作品は以下の通りです。

日教上人像（青蓮寺所蔵）：日蓮宗の僧侶、日教の肖像画です。
達磨図（養竹院所蔵）：禅宗の開祖である達磨大師を描いた作品です。
婦女弾琴図（大和文華館所蔵）：琴を演奏する女性を描いた作品です。
西洋二武人図師父二童子図（神戸市立博物館所蔵、重要文化財）：西洋の武人や子供たちを描いた作品で、彼の洋風画の技法が顕著に表れています。

信方の作品は、日本の洋風画の初期段階における貴重な資料であり、当時の文化交流や芸術的な動向を理解する上で重要な役割を果たしています。彼の生涯や作品に関する更なる研究が待たれます。

参考資料
神戸市立博物館

関連項目
ジョバンニ・ニコラオ

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