信越 (列車)

快速「信越」の概要

快速「信越」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が新潟県の直江津駅から新潟駅までを結ぶ信越本線上でかつて運行していた快速列車です。この列車は、同区間で運行されていた着席通勤列車の流れを受け継ぎ、2021年3月13日のダイヤ改正でそれまでの「おはよう信越」と「らくらくトレイン信越」を統合・改称する形で誕生しました。運行期間はわずか約1年間で、翌2022年3月12日のダイヤ改正をもって廃止されています。

「信越」の大きな特徴は、JR東日本管内の定期快速列車としては唯一、全車両が座席指定席となっていた点です。前身の「おはよう信越」は当初から座席指定制でしたが、「らくらくトレイン信越」は乗車整理券による座席定員制を採用していました。これを「信越」として一本化する際に、全て指定席制へと移行されました。

運行ダイヤは、設定された期間を通じて朝に直江津発新潟行きの列車が1本、夜に新潟発直江津行きの列車が1本という体制でした。停車駅は、愛称のない通常の快速列車と比較して大幅に絞り込まれており、特急「しらゆき」とほぼ同等の停車駅数でした。停車駅は、直江津、柿崎、柏崎、来迎寺、長岡、見附、東三条、加茂、新津、新潟でした。なお、上り列車のみ三条駅と矢代田駅にも停車していました。

使用車両は、新潟車両センターに所属するE653系電車1100番台の4両編成が充当されました。編成全体が普通車の指定席として運用されていました。

新潟地区における着席通勤列車の歩み

快速「信越」の誕生と廃止は、新潟地区における着席通勤輸送の長い歴史の中に位置づけられます。信越本線や羽越本線といった幹線沿線では、新潟都市圏への通勤・通学需要が高まり、座って移動したいというニーズに応えるため、専用の列車が設定されてきました。

信越本線方面

信越本線の新潟～長岡方面では、1994年12月3日のダイヤ改正で、新潟発長岡行きの通勤ライナー「らくらくライナー」が登場しました。当初は乗車整理券が必要な列車でした。1999年2月には「らくらくホームトレイン」と改称され、2004年3月には羽越本線方面に「らくらくトレイン村上」が新設されたのに伴い、「らくらくトレイン長岡」へと再び名称が変更されています。

2012年3月、大阪～新潟間を結んでいた夜行急行「きたぐに」の定期運行終了により、特に上越地方や柏崎と新潟を結ぶ早朝・深夜帯の移動手段の補完が必要となりました。「らくらくトレイン長岡」はこの役割を引き継ぐ形で運行区間を直江津まで延長し、名称を「らくらくトレイン信越」に改め、平日運転から毎日運転に変更されました。同じ改正で、直江津始発の朝の列車として、全車指定席制の「おはよう信越」も新たに設定されています。

そして、2021年3月の改正で、「らくらくトレイン信越」の乗車整理券制度が廃止され、「おはよう信越」と同様に全車指定席化されました。これにより両列車は統合され、列車名も新たに「信越」となったのです。かつての停車駅は、おおむね「おはよう信越」と「らくらくトレイン信越」それぞれのものを引き継いでいました。

信越本線方面の着席列車の使用車両は、運行開始当初は新潟車両センターの485系電車（6両編成）が使われていました。特急や快速としても運用されていた車両で、専用のヘッドマークが掲げられていました。「らくらくトレイン信越」として運行されていた時期には、一部の車両でグリーン車が普通車扱いとなったり、女性専用車両である「レディースカー」が設定されたりといった特徴がありました。しかし、2015年3月の改正でE653系電車1100番台（4両編成）に置き換えられた際に、これらの設定はなくなっています。

羽越本線方面

羽越本線の新潟～村上方面でも、着席通勤ニーズの高まりを受け、2004年3月に新潟発村上行きの快速「らくらくトレイン村上」が登場しました。この列車は、当時新潟止まりとなった夜行快速「ムーンライトえちご」の上り列車の運用を一部引き継ぐ形で設定され、廃止まで下り列車が1本のみ毎日運行されていました。2021年3月改正で「らくらくトレイン村上」は廃止となり、羽越本線方面の着席列車は姿を消しました。村上駅に到着後、乗車整理券不要の快速として新潟へ折り返す運用は、いわゆる「乗り得列車」として知られていました。

羽越本線方面の着席列車に使用された車両も、当初は信越本線方面と同様に485系電車（6両編成）が使われ、グリーン車やレディースカーの設定も共通でした。2014年7月からはE653系電車1000番台（7両編成）に変更され、この際にグリーン車の開放とレディースカーの設定は終了しています。

「信越」の終焉、そしてその後

「おはよう信越」と「らくらくトレイン信越」を統合して誕生した快速「信越」でしたが、わずか1年で運行を終えました。2022年3月12日のダイヤ改正をもって廃止された後、かつての「らくらくトレイン信越」が担っていた長岡～直江津間の輸送については、E129系電車による無料の快速列車がその役割の一部を引き継ぐ形となりました。短命に終わった「信越」でしたが、新潟地区の着席通勤輸送の歴史において、座席指定制への統一という一つの節目となった列車と言えるでしょう。

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