倉敷川

倉敷川：美観地区を彩る歴史と自然の川

倉敷川は、倉敷市の美観地区から岡山市南区の児島湖へと流れる二級河川です。特に倉敷美観地区一帯は、川沿いの柳並木と美しい町並みで知られ、多くの観光客が訪れる人気のスポットとなっています。

倉敷川の歴史

かつて倉敷は、高梁川河口の干潟に面した港町として栄えていました。江戸時代以降の新田開発によって陸地化が進み、干潟の残りが入り江となり、潮の満ち引きを利用した運河として機能し始めたのが倉敷川の始まりとされています。

倉敷川は、「汐入川」「舟入川」「前神川」とも呼ばれ、昭和30年代初めまでは物資輸送の要として重要な役割を果たしていました。美観地区より下流の入船橋付近には船溜まりがあり、多くの船が荷物の積み下ろしを行っていたそうです。しかし、1959年（昭和34年）の児島湾締切堤防の完成により、倉敷川は運河としての機能を失い、一時的に市民の生活から遠ざかることになります。さらに、倉敷用水と結んでいた新川が埋め立てられたことも影響し、源流を持たない汐入川であったため、水質が悪化するという問題も抱えていました。

観光地としての再生と環境への取り組み

高度成長期の観光ブームが倉敷に訪れると、美観地区の整備が行われ、倉敷川も再び注目を集めるようになります。1968年（昭和43年）には、倉敷市による美観地区の整備に伴い、川底の浚渫が行われました。また、地下水路を通して高梁川の水を導入し、倉敷用水との通水を復活させる工事も行われ、水質改善に尽力しています。近年では、中央1丁目から藤戸地区までの沿岸が公園化され、船溜り跡には藤棚やベンチが設置されるなど、市民が憩える親水公園として整備されました。

新田から粒浦一帯では、市民グループによる桜の植樹が進められ、住民の散歩コースとなるなど、市民の憩いの場として親しまれています。また、加須山付近の河畔は、県内唯一のミズアオイ自生地であり、住民らによって種蒔きが行われるなど、自然環境を回復しようとする動きも活発です。

環境問題

倉敷市粒江付近には、オオクチバスが多数生息しており、50cmから60cmの大型の個体も確認されています。釣り人にとっては定番のスポットとして知られていますが、電線に引っかかったまま放置されたルアーや、捨てられたゴミが多く、水質悪化に繋がっていると近隣住民からの声も上がっています。

近代化産業遺産

1889年（明治22年）に倉敷紡績倉敷本社工場が開業すると、工場への原綿の運び込みに倉敷川が利用されました。

2014年（平成26年）1月22日には、倉敷川に残る旧倉敷紡績倉敷本社工場専用の荷揚げ場跡（倉敷市本町）で、舟荷の積み降ろしに使われたとみられるスロープ状の遺構が発見されています。

支流

吉岡川
六間川
郷内川
丙川

倉敷川は、美しい景観と歴史を持つ貴重な存在です。市民の憩いの場として、また観光資源として、これからも大切に守り、育てていく必要があるでしょう。

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