倉歴峠

倉歴峠（くらふとうげ）

倉歴峠は、滋賀県甲賀市の甲賀町五反田と三重県伊賀市の柘植町をつなぐ峠です。峠の標高は250メートルで、近江と伊賀地方を結ぶ重要な位置にあります。現在では、滋賀県道・三重県道4号草津伊賀線がこの峠を通過しています。倉歴峠は「油日越」（あぶらひごえ）や「与土越」（よどのごえ）とも呼ばれ、地域の歴史的な背景を持っています。

この峠の歴史は古く、673年に発生した壬申の乱では、大海人皇子が多品治に命じて三千の兵をこの地に配置し、田中足麻呂に倉歴道を守らせたと伝えられています。この歴史的背景は、倉歴峠が戦略的な要所であったことを物語っています。794年には、桓武天皇の平安京への遷都に伴い、東海道が京都から近江に向かって延びていく際に、倉歴峠を経由する道が設定されました。この道は、草津付近で東山道と別れ、加太峠を通って東国へ向かう重要な交通路となりました。

868年（仁和2年）には、鈴鹿峠を通る「阿須波越」が東海道として設けられるまで、倉歴峠は東西交通の要所として利用されていました。1184年には、治承・寿永の乱において、伊賀や伊勢の平家方が近江に侵攻し、油日で佐々木秀義と戦ったとの記録も残っています。このように、倉歴峠は歴史の重要な舞台となった峠でもあります。

その後、東海道が鈴鹿峠を通るようになると、倉歴峠は「杣街道」と呼ばれるようになり、杣川沿いに走る街道として、甲賀と伊賀を結ぶ生活の道として機能しました。明治時代には、関西鉄道（現在の草津線）が倉歴峠近くに敷設され、ますます交通の要所としての役割を果たしました。

名前の由来にも注目が必要です。「倉歴」という呼称は、三重県伊賀市柘植町の倉部集落やその近くを流れる倉部川に由来しています。地域の自然と歴史が交わるこの峠は、今もなお多くの人々に親しまれています。

倉歴峠は、歴史的な出来事だけでなく、地域の人々にとっても生活に密接に関係した道でした。長い間、この峠は文化や物資の交流を促進し、地域の発展に寄与してきた場所でもあります。現在も広がる自然と歴史が交錯するこの地を訪れ、その魅力を感じてみることをお勧めします。

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