倉科典仁

倉科典仁（くらしな のりひと）氏は、1963年に生まれた日本の編集者であり実業家です。現在は株式会社Love&Largeの代表を務めるとともに、ぽっちゃり体型の男性をターゲットにしたライフスタイルメディア『Mr.babe』の編集長として活動しています。

そのキャリアは、1988年、25歳でミリオン出版株式会社に入社したことから始まりました。同社では、若者向けのティーン誌や自動車関連の雑誌、さらには単行本など、多岐にわたるジャンルの編集に携わります。この時期、ホストをテーマにした写真集『アジアンジゴロ』や書籍『カリスマホストたちの「帝王学」』の編集に関わったことが、後の彼の編集者としての方向性に大きな影響を与えることになります。この経験を通じて、彼はホストという存在や、彼らが持つ独特のマインドセットに関心を深めていきました。

2003年10月、倉科氏は新たなファッション雑誌『G-STYLE』を創刊します。これは後に『MEN'S KNUCKLE』となる雑誌の前身にあたります。創刊当初、『G-STYLE』は「ジゴロ」をキーワードに、「女性からモテるには、多少不良っぽい、アウトローな要素や破天荒さが必要だ」という考えのもと、誌面が構成されていました。しかし、このストレートすぎるコンセプトは読者の支持を十分に得られず、創刊初期の販売は低迷します。

この状況を打開するため、倉科氏は編集方針の転換を決断します。ホストが持つ人目を惹きつけ、魅了するマインドセットを基盤としつつも、よりファッションに焦点を当て、当時としてはインパクトのある言葉である「激モテ」というキーワードを前面に押し出したスタイルへと舵を切ります。そして、2004年4月、雑誌名を『MEN'S KNUCKLE』と改めてリニューアル創刊しました。この大胆な方向転換は見事に成功します。リニューアル後の雑誌は、7割という高い消化率を達成し、2007年12月には発行部数12万部を記録する人気雑誌へと成長を遂げました。

『MEN'S KNUCKLE』の成功により、誌面で提案された、ホストやギャル男といった要素を取り入れた男性ファッション、いわゆる「お兄系ファッション」は一大ブームを巻き起こします。倉科氏は同誌の編集長として、またミリオン出版の編集局長としても、このムーブメントの仕掛け人、そして第一人者としてメディアから注目される存在となり、2009年頃にはテレビ番組や他の雑誌などでコメンテーターとしても活躍の場を広げました。

ミリオン出版での輝かしいキャリアを経て独立後、倉科氏は新たな挑戦に乗り出します。彼自身の体型も変化してきた経験を活かし、ぽっちゃり体型の男性に特化したライフスタイル雑誌を企画します。こうして2015年に誕生したのが『Mr.babe』です。この雑誌は、従来の細身の男性をモデルとしたファッション誌とは一線を画し、体の大きな男性もおしゃれを楽しめること、ポジティブな生き方を提案することをコンセプトに掲げ、独自のニッチ市場を開拓しています。

倉科典仁氏のキャリアは、暴走族雑誌からホスト、そしてファッション、さらには体型に特化したライフスタイルまで、一見すると関連性の薄い多様なジャンルを横断しています。しかし、その根底には常に、時代の空気や人々の潜在的な願望を捉え、それを独自の切り口で表現し、新しい価値観やスタイルを提示しようとする編集者としての情熱が見て取れます。『ティーンズロード』での経験がアウトローへの理解に繋がり、ホスト関連コンテンツでの探求が『MEN'S KNUCKLE』のコンセプトを生み出し、自身の経験が『Mr.babe』創刊へと繋がったと言えるでしょう。彼の編集者としての軌跡は、既存の枠にとらわれず、常に新しい可能性を追求し続ける姿勢の表れと言えます。

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