個人タクシー

日本における個人タクシー

日本における個人タクシーとは、1人1車制個人タクシー事業を指し、運転手が自ら一台のタクシー車両を経営する形態です。この事業は、道路運送法に基づき、必要な免許と許可を得た運転手によって運営されます。2008年のデータでは、個人タクシーは約46,000事業者存在し、タクシー車両全体の約16.8%を占めていました。

個人タクシーと法人タクシー

個人タクシーは、運転手自身が経営するのに対し、法人タクシーは、経営者が複数の運転手を雇用し、複数台の車両で事業を行います。しかし、「法人タクシー」という名称は、あくまで個人タクシーとの対比上の表現であり、経営者の法人格の有無は問われません。国土交通省の公示では、個人タクシーは「1人1車制個人タクシー事業」と明記されています。

本稿では、特に注記がない限り、「個人タクシー」は「1人1車制個人タクシー事業」を、「法人タクシー」はそれ以外の一般乗用旅客自動車運送事業を指すこととします。

個人タクシーの歴史

個人タクシーは、第二次世界大戦中から戦後にかけて一時的に認められませんでしたが、1959年に復活しました。当時、タクシー業界は過酷なノルマによる無謀な運転や白タクの横行が問題となっており、安全で良質なタクシーサービスを求める声が高まっていました。このような状況下で、当時の運輸大臣が業界に新風を吹き込むために個人タクシーを解禁しました。

個人タクシーの現状

現在、個人タクシーは民間団体の協会に所属し、各事業者の管理などを行っています。開業には、二種免許の取得に加え、長年の運転経験、無事故無違反、資金、営業拠点の確保、法令・地理試験の合格など多くの条件を満たす必要があります。個人タクシーは、東京23区や政令指定都市、県庁所在地などの都市部で多く見られます。一方、一部の県では個人タクシーが存在しない地域もあります。事業区域は行政区域と必ずしも一致せず、例えば東京都区部と周辺地域が一体の事業区域となる場合があります。

車両の特徴

個人タクシーの車両規定は法人タクシーに比べて緩やかで、多様な車種が使用されています。燃料はガソリン車が主流で、アウターリアビューミラーはドアミラーが多くなっています。以前は、LPG車をガソリン車から改造するケースもありましたが、現在では少なくなっています。輸入車も多く、自動ドアがない場合は運転手が手動で開閉することがあります。ハイブリッド車は燃費の面で有利なため、都市部で多く見られます。料金区分は法人タクシーと同様ですが、中型車の定義は地域によって異なり、首都圏では3ナンバー車が多いです。

東京都の個人タクシー

東京都では、東個協（でんでん虫グループ）に加盟する車両は、白色を基本とし、青いラインが入ったデザインが特徴です。後席プライバシーガラスは原則禁止ですが、ハイブリッド車や福祉車両などは免除される場合があります。日個連都営協（提灯グループ）の車両は、純正の白色や黒色が多く見られます。組合員は、組合費や保険、車種選定、無線配車の関係で組合を乗り換えることもあります。

その他の都市

関東・関西圏以外の都市では、3ナンバー車の個人タクシーは少なく、中型車の料金設定が異なるため、車種が限られています。小型車が多く、近年はハイブリッド車も増えています。

個人タクシーの行灯

個人タクシーの行灯は、所属する組合によってデザインが異なります。

組合系
でんでん虫グループ：かたつむり形の行灯
ちょうちんグループ：ちょうちん形の行灯
独立系：上記2つの組合に加入しない事業者で、様々な形状の行灯があります。
* 企業提携型：提携先の企業と同一デザインの行灯を使用します。

マスターズ制度

一部の個人タクシーには、三ツ星の行灯（マスターズマーク）が付いています。このマークは、優良個人タクシー事業者認定制度に合格したタクシーにのみ許可されています。認定を受けるには、まず一ツ星、二ツ星と段階的に認定を受け、厳しい審査を通過する必要があります。現在、マスターズマークは行灯の中央部に表示されています。

個人タクシーの組織

個人タクシーは、ほぼ全てが一般社団法人全国個人タクシー協会に加入しています。この協会は、全個連、日個連、独立系の団体をまとめる全国組織です。京都では、組合に加入しない個人タクシーが多いという特徴があります。

まとめ

個人タクシーは、運転手自身が経営する独自のタクシー事業です。その歴史は古く、様々な変遷を経て現在の形に至っています。車両や組織、サービス内容には多様性が見られ、地域ごとの特徴もあります。個人タクシーは、都市交通の一翼を担い、地域住民や観光客にとって重要な移動手段となっています。

もう一度検索