借上 (近世)

借上（かりあげ）とは

江戸時代における「借上」は、藩が直面していた深刻な財政難を乗り越えるために実施された政策の一つです。特に、家臣への知行や封禄の一部を藩が借り入れ、支給の停止や商人への免税特権の制限を行うことを指します。中でも、家臣の知行の一時的な借り上げが特によく知られています。

歴史的背景

この制度が初めて確認できるのは、1647年（正保4年）にさかのぼる小浜藩の借上の例です。この施策が実施された背景には、藩レベルの経済的な困窮があり、藩の財政を救う手立てを求める声が高まっていました。江戸時代中期以降、類似の措置はさらに多くの藩に広まり、借上は多くの藩で恒例行事のように行われるようになったのです。

借上の実態

借上という名称は本来、一時的に借り入れることを意味しており、一定期間が経過すれば再び家臣に支給することが期待されていました。しかし、実際の運用においては、返済が行われることは少なく、次第にその制度は形式的になっていきました。期限の定めがなくなり、制度そのものが定着する中で、借上は実質的には減封や減知と同じ意味合いを持つようになってしまったのです。

批判と影響

このような借上の政策に対しては、多くの批判が寄せられました。著名な経済学者である本多利明は、その著作『経世秘策』の中で、借上によって生活が困窮した家臣たちの姿を厳しく描写しています。「半知以上を借り上げている藩も多く、主君を怨敵のように恨む者もいる」という痛烈な批判は、その時代の家臣たちの現実を如実に物語っています。

結論

借上は、江戸時代における藩の財政難を象徴する施策であり、当時の社会と経済の複雑な関係を反映しています。この制度により、多くの家臣が本来の知行を失い、生活苦に陥ることで、藩と家臣の信頼関係が損なわれるという事態も生じました。最終的には借上は歴史的な教訓として、藩政の在り方についての再考を促す役割を果たすことになります。

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