倭京

倭京: 古代日本の宮都

倭京（わきょう、またはやまとのみやこ）は、日本の古代において存在した宮都です。この名称は、『日本書紀』の孝徳天皇および天武天皇に関連する巻に記されています。一般的に、倭京は飛鳥の宮都を含む大和地域の首都機能を持つ場所と捉えられ、飛鳥京と結びつけられます。しかし、倭京に関しては様々な観点からの議論が展開されています。

倭京とその呼称の重要性

『日本書紀』において、「倭京」という名称が「京」として一貫して使用されていることは注目に値します。この点は他の宮都、例えば近江宮や難波長柄豊崎宮とは異なる点であり、その背後には倭京の独自性があることを示唆しています。歴史家の中には、藤原京も倭京に含まれるとする見解や、倭京という用語が特定の場所を特定する固有名詞ではなく、外部から見た大和に存在する京を指すものであるとする意見を持つ者もいます。これは、倭京がその地域の文化的・政治的意義を持った場所であったことを示唆しています。

条坊制都城としての倭京

694年に正式に宮が遷された藤原京は、『日本書紀』では「新益京」と呼ばれています。この「新益京」ができる以前に、倭京という都が存在し、その際に条坊制が敷かれていた可能性も提起されています。岸俊男は、倭京が藤原京よりも前の段階であった条坊制を持つ都城である可能性があると指摘しています。特に壬申の乱に関連する「倭京攻防戦」の記述が、その存在を裏付ける資料として機能しています。

また、倭京が藤原京に先立つ形で整った街の構造を持っていたことも示唆されており、天武紀に記載されている「京内二十四寺」という文言からは、倭京が比較的明確な境界を持った地域であったことが窺えます。

倭京の実態に関する異なる見解

一方で、仁藤敦史は倭京を条坊制の都城とは異なる存在として考えており、天武朝以前の地域に散在する支配拠点の集合体として理解しています。この見解は、飛鳥京以前の宮都が存在した際に、倭京の遺跡が形成された可能性を強調しています。大王が飛鳥へと集まることによって、新たに恒常的な施設が設立され、倭京が一定の発展を遂げていったという考え方です。

また、小澤毅は『日本書紀』の特定の年代における「京」の使用が頻発することを指摘し、676年以降には新たな「京」が存在していたこと、その周辺に広がる「京外」や「京職」という行政区画の存在から、倭京とは異なる性質の空間が形成されていたと結論づけています。

まとめ

古代日本における倭京は、飛鳥京や藤原京との関連性が深く、様々な学者によってその実態が論じられてきました。それぞれの見解からは、単なる名称を超えた歴史的文脈、政治的背景、社会構造が浮かび上がります。倭京は大和地域における重要な拠点として位置付けられており、その存在は古代日本の形成に寄与したのです。

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