孝徳天皇

孝徳天皇（こうとくてんのう）

孝徳天皇は、飛鳥時代の第36代天皇（在位：645年 - 654年）です。諱は軽（かる）といい、その治世は難波朝とも呼ばれます。

生涯

敏達天皇の孫にあたる押坂彦人大兄皇子の王子として生まれました。母は欽明天皇の孫である吉備姫王です。皇極天皇の同母弟であり、天智[[天皇]]、間人皇女、天武[[天皇]]の叔父にあたります。姪の間人皇女を皇后とし、阿倍倉梯麻呂の娘である小足媛を妃として有間皇子を儲けました。また、蘇我倉山田石川麻呂の娘を妃としています。

『日本書紀』によると、仏教を尊重し、儒教を好む一方で神道を軽んじたとされています。また、身分に関わらず恩赦を頻繁に行いました。即位前には、蘇我入鹿を避けていた中臣鎌子（後の藤原鎌足）と親交があったとされています。

乙巳の変の後、皇極天皇から譲位を受け即位しました。この時、中大兄皇子が天皇位を辞退し、軽皇子を推薦したという経緯があります。孝徳天皇は、皇極天皇を皇祖母尊（すめみおやのみこと）とし、中大兄皇子を皇太子に任命、阿倍内麻呂を左大臣、蘇我倉山田石川麻呂を右大臣、中臣鎌子を内臣とするなど、新体制を整えました。

即位後、元号を制定し、大化元年としました。その後、白雉に改元しています。大化の改新と呼ばれる一連の政治改革を推し進めましたが、その実態については現在も議論が続いています。

在位中には、高句麗、百済、新羅からの使節が頻繁に訪れました。また、北方の蝦夷に対しては、渟足柵と磐舟柵を築き、防備を固めました。都は難波長柄豊碕宮に定められましたが、晩年には、皇太子（中大兄皇子）との対立が深刻化し、皇太子が倭京に遷都を求めた際に拒否した結果、皇太子は皇祖母尊や皇后らを連れて倭に移動してしまい、失意のうちに病没しました。

遠山美都男は、孝徳天皇が乙巳の変の黒幕であったとする説を唱えています。しかし、即位後に蘇我氏系の豪族を重用している点から、今後の議論が待たれるところです。

年譜

皇極天皇4年（645年）
6月12日：中大兄皇子が蘇我入鹿を殺害
6月13日：蘇我蝦夷が自殺
6月14日：皇極天皇から譲位を受け即位。皇極天皇を皇祖母尊、中大兄皇子を皇太子とする
6月19日：大槻の樹下に群臣を集め忠誠を誓わせる
（日付不明）：元号を立て、大化元年とする
大化元年（645年）
7月2日：皇后と2人の妃を立てる
7月10日：高句麗・百済・新羅の使者が朝貢
8月5日：東国などの国司を任命。戸籍の作成や田畑の検校を命じる
8月8日：仏教の援助を約束。僧旻ら10人の僧を十師とする
9月1日：使者を遣わし諸国の武器を治めさせる
9月3日：古人皇子が謀反を企む
9月12日：中大兄皇子が古人皇子を討つ
9月19日：土地の貸借を禁止
12月9日：都を難波長柄豊碕に遷す
大化2年（646年）
1月1日：改新之詔を宣する
2月15日：民の投書を受けるための櫃を設ける
3月22日：王臣と庶民の墓制を定め、殉死を禁止。
8月14日：品部を廃止し、旧職を廃して百官を設ける
9月：高向玄理を新羅に遣わし、任那の調を止める
大化3年（647年）
1月26日：高句麗と新羅の使者が調賦を貢ぐ
4月26日：皇子・群臣・百姓に庸調を与える旨を詔する
10月11日：有馬温湯へ行く
この年：七色十三階の冠を制定
大化4年（648年）
2月1日：三韓に学問僧を派遣
4月1日：古い冠を廃止
大化5年（649年）
2月：冠十九階を制定
3月17日：阿倍倉梯麻呂が死去
3月24日：蘇我日向が皇太子に蘇我倉山田石川麻呂を讒言
3月25日：蘇我倉山田石川麻呂が自殺
4月20日：巨勢徳陀古を左大臣に、大伴長徳を右大臣とする
大化6年（650年）
1月1日：味経宮で賀正礼を行う
2月9日：穴戸国司の草壁醜経が白雉を献上
白雉元年（650年）
2月15日：白雉を観る儀式を行い、大赦し、白雉と改元
白雉2年（651年）
12月30日：大郡から難波長柄豊碕宮へ遷都
白雉3年（652年）
4月15日：僧恵隠を内裏に呼び、『無量寿経』を講じさせる
白雉4年（653年）
5月12日：遣唐使を派遣
この年：皇太子が倭京への遷都を求めるも天皇が拒否。皇太子は皇祖母尊や皇后らを連れて倭へ移る
白雉5年（654年）
1月5日：中臣鎌足に紫冠を授ける
2月：遣唐使を派遣
10月10日：崩御

系譜

皇后：間人皇女（舒明天皇皇女）
妃：阿倍小足媛（阿倍倉梯麻呂の娘）
皇子：有間皇子
妃：蘇我乳娘（蘇我倉山田石川麻呂の娘）

陵・霊廟

陵墓は大阪府南河内郡太子町にある大阪磯長陵（おおさかのしながのみささぎ）に治定されています。宮内庁上の形式は円丘です。また、皇居では、皇霊殿に他の歴代天皇とともに祀られています。

在位中の元号

大化（645年 - 650年）
白雉（650年 - 654年）

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