倭館

倭館の歴史と役割

倭館（わかん）は、中世から近世にかけて朝鮮半島南部に存在した日本人居留地であり、特に李氏朝鮮時代において重要な役割を果たしました。江戸時代には、対馬府中藩が朝鮮との外交や貿易を行っていました。

中世の倭館

1392年、李氏朝鮮が成立すると、朝鮮は商船の入港を制限することなく自由な交易を許可しました。これにより、多くの日本の大名や商人が朝鮮に渡航し、貿易を行いました。しかし一部は倭寇に転身し、朝鮮政府は国防上の理由から、1407年に倭寇の入港地を制限しました。これにより、富山浦と乃而浦の二つの港が指定され、日本の公式使者の入港もこの二港に限られました。

対馬の早田左衛門太郎は1426年に取引の自由を求めましたが、朝鮮政府は拒否し、代わりに蔚山の塩浦を入港地に追加しました。これらの港は初めは日本船専用でしたが、次第に日本人が住み着くようになり、恒居倭と呼ばれる日本人コミュニティが形成されました。しかし、彼らは朝鮮政府の統制を受けず、さまざまな活動を行っていました。

1510年、日本人の間で発生した交易上のトラブルが原因で三浦の乱が起き、朝鮮側に武力で鎮圧され、三浦倭館は一時閉鎖されましたが、一部は後に再開されました。

三浦倭館の詳細

富山浦倭館

この倭館は現在の釜山広域市東区に位置し、1494年にはおおよそ450人の日本人が住んでいました。1510年の乱を経て一時閉鎖されましたが、数年後には再開されました。釜山浦倭館は1592年まで存続し、最も長い間日本人が住んでいた国際的貿易の拠点の一つです。

乃而浦倭館

乃而浦倭館は当時2,500人の日本人が住む大きな居留地でありましたが、約定の破棄などの理由で、閉鎖され、その後再開されるも、長続きはしませんでした。

塩浦倭館

最小規模の倭館であり、1426年に開港されましたが、三浦の乱後には再開されることはありませんでした。

ソウルの倭館

漢城（現在のソウル）にも「東平館」という接待施設が存在し、これが「倭館」と呼ばれました。こちらは常に日本人が住んでいたわけではなく、接待のために設けられたものでした。

近世の倭館

1592年から始まった日朝の国交の断絶後、1607年に最初の朝鮮通信使が来日し、徐々に国交が回復しました。対馬藩は朝鮮との貿易権を獲得し、1609年には己酉約条が締結されました。しかし、日本人の外出は制限され、倭館内の人間関係も厳格なルールが設けられました。

倭館における交易

交易において、日本は銅や金、硫黄を輸出していましたが、南方の産物や絹などの貿易も行われていました。特に近世になると、日本産品においても質の向上が見られ、中国産の絹が輸出されるようになり、国内市場にも影響を与えました。

倭館の終焉

1867年には明治新政府の成立を通告しますが、朝鮮側は受け入れを拒否しました。1872年には草梁倭館が接収され、外交問題に発展しました。最終的には1876年の日朝修好条規が締結され、倭館は200年の歴史を経てその幕を下ろしました。

現存の倭館地名

倭館の名は、現代の韓国にも残っていますが、これはかつて日本軍の兵糧集積所であったために名付けられた地名です。

これらの歴史が示すように、倭館は日本と朝鮮の文化・経済的な交流を象徴する重要な場所であり、さまざまな歴史的背景を持っています。

もう一度検索