偏

漢字の構成要素「偏」：その種類と特徴

漢字は、複数の構成要素から成り立っています。その中でも重要な要素の一つが「偏（へん）」です。偏は、主に漢字の左側に位置する偏旁（へんぼう）の総称で、部首として用いられる偏は、全ての部首の中で最も種類が多く、その偏を部首とする漢字は、全体の過半数を占めるほど、漢字の世界において重要な役割を担っています。常用漢字においても、偏を部首とする漢字の割合は半数を超えています。

偏の多くは形声文字（音と意味を表す漢字）であり、会意文字（複数の意味を組み合わせて意味を表す漢字）も存在します。表記方法は、平仮名を用いる場合と、漢字を用いる場合があり、文脈によって使い分けられています。

代表的な偏とその特徴

以下では、常用漢字の数が多い順に代表的な偏を紹介し、それぞれの詳細を解説します。

1. さんずい（三水）

「海」「湖」「沼」など、水に関する地形や水の性質、状態を表す漢字に使用されます。漢字で『三水』と書き、三の字に似ていることから名付けられました。水の流れを象形化した形をしており、偏の中では最も字数が多いとされています。常用漢字数は112と、すべての部首の中で最も多い部首です。ただし、「酒」は酉部（とりがまえ）に分類されます。

常用漢字例：汁、氾、汚、汗、江、池、汎、汽、決、沙、汰、沢、沖、沈、没、沃、泳、沿、河、泣、況、治、沼、注、泥、波、泊、泌、沸、法、泡、油、海、活、洪、浄、津、浅、洗、洞、派、洋、消、浸、浜、浮、浦、浴、流、涙、浪、淫、液、涯、渇、渓、混、済、渋、淑、渉、深、清、淡、添、涼、温、渦、減、湖、港、滋、湿、測、渡、湯、満、湧、湾、滑、漢、源、溝、準、滞、滝、溺、漠、滅、溶、演、漁、漆、漸、漬、滴、漂、漫、漏、潰、潟、潔、潤、潜、潮、澄、激、濁、濃、濯、濫、瀬

主な表外字例：汀、汝、汐、汲、沁、沌、沐、沽、泄、沫、洩、洒、洲、浣、浩、浙、涎、涅、浬、涵、涸、淳、渚、淀、淘、淋、渥、湮、淵、渠、渾、湘、渫、湊、湛、溢、滓、溜、滲、漕、漱、漲、漉、漑、溌、澹、澱、澪、濠、濡、濤、瀉、瀑、濾、瀞、瀕、瀝、灌、瀟、瀾、灘 など

2. にんべん（亻）

「仁」「休」「個」など、主に人間や人の動作に関する漢字に使用されます。常用漢字数は90で、教育漢字の約半数を占め、教育漢字においてはさんずいを上回り、最も多い部首です。「化」は匕部（ひがまえ）に分類されます。

常用漢字例：仁、仏、仕、仙、他、代、付、仮、伎、休、仰、件、仲、伝、任、伐、伏、位、何、佐、作、伺、似、住、伸、体、但、低、伯、伴、依、価、佳、供、使、侍、侮、併、例、係、侯、俊、信、侵、促、俗、便、保、侶、俺、倹、個、候、借、修、値、倒、俳、倍、俵、倣、俸、倫、偽、偶、健、側、停、偵、偏、偉、備、傍、僅、傾、傑、債、催、傷、僧、働、像、僕、僚、億、儀、傲、儒、償、優

主な表外漢字例：仇、什、仗、仆、仔、伊、伍、伽、佇、佚、佃、佑、伶、侃、侑、侘、倚、侠、俄、俚、俐、倶、倦、俯、倭、倖、偲、傭、僑、僻、儘、儚、儲 など

3. てへん（扌）

「指」「打」「拝」など、手や手を使う動作に関する漢字に使用されます。人体を表す偏の中では最も字数が多いとされ、常用漢字数は86です。

常用漢字例：打、払、扱、技、抗、抄、折、択、投、把、抜、批、扶、抑、押、拐、拡、拠、拒、拘、招、拙、拓、担、抽、抵、拝、拍、披、抱、抹、拉、括、挟、拷、拶、指、持、拾、拭、挑、挨、挫、振、捜、挿、捉、捗、捕、掛、掘、掲、控、採、捨、授、推、据、接、措、掃、探、排、描、捻、握、援、換、揮、提、搭、揚、揺、携、搾、摂、損、搬、摘、撮、撤、撲、操、擁、擬、擦

主な表外字例：托、扮、抉、拌、拇、抛、拗、按、拮、拱、拵、挺、捏、捌、挽、掩、掬、捷、掟、捺、捧、掠、揆、揉、揃、揶、揄、掻、掴、摺、撒、撰、撞、撓、撥、撫、撼、撻、擂、擢、擾、擲、擽、攪、攫 など

(以下、同様の形式で他の偏についても記述)…ごんべん、きへん、いとへん、りっしんべん、にくづき、かねへん、こざとへん、つちへん、おんなへん、くちへん、のぎへん…など、常用漢字数20以上の偏を解説します。その後、常用漢字数20未満の偏についても、同様の形式で解説します。それぞれの偏について、常用漢字の例、主な表外字の例、その偏の特徴などを詳細に記述していきます。

参考文献

『漢検漢字辞典』（京都）日本漢字検定協会編著
『現代標準漢和辞典（学研）』藤堂明保・加納喜光編著　
『新漢語林（大修館書店）』鎌田正・米山寅太郎著
『大漢和辞典』（大修館書店） 諸橋轍次著

もう一度検索