偶像崇拝に対する聖体の秘跡の勝利

偶像崇拝に対する聖体の秘跡の勝利

ピーテル・パウル・ルーベンスによる「偶像崇拝に対する聖体の秘跡の勝利」は、1625年頃に描かれた油彩作品であり、板に描かれています。この絵画は、スペイン領ネーデルラント総督アルブレヒト・フォン・エスターライヒの妻、イサベル・クララ・エウヘニアが、マドリードのデスカルサス・レアレス修道院に贈るタペストリー連作のためにルーベンスに発注したデザインの下絵として制作されました。現在、この作品はマドリードのプラド美術館に所蔵されています。

作品の詳細

ルーベンスが描いた油彩下絵は、彼の工房で原寸大に拡大され、それを基にブリュッセルでタペストリーが織られました。このタペストリーは、1628年にマドリードへ送られました。20点からなるタペストリー連作の中心は、異教や異端に対する聖体の秘跡の勝利と、旧約聖書に登場するその予型をテーマとする11点です。これらの11点の作品において、ルーベンスは情景を、天使たちが張ったタペストリーとして表現しました。このタペストリーは、2本の螺旋柱または円柱の間に掛けられているという構成をとっています。

本作「偶像崇拝に対する聖体の秘跡の勝利」では、画面上部右側に描かれた天使が聖杯を掲げ、その光がカピトリーノの丘にあるユピテル神殿を照らしています。神殿内では異教の儀式が行われていますが、聖体の輝きに恐れをなした人々が逃げ出している様子が描かれています。中央には、筋骨隆々の屠殺人が鑑賞者に向かって歩いていますが、頭上の光に目を覆っています。その後ろには、年老いた祭司と若い祭司が続いています。左側では、跪いた召使が牡牛をいけにえにするため、角をつかんで押さえつけています。

この混乱した状況の中で、前景右側の石の祭壇は傾き、中央の装飾された金の水差しからは、ユピテルへの捧げ物のワインがこぼれています。この水差しは、画面から突き出るように描かれ、こぼれたワインは、両側に2頭の牡羊の頭部がある建築的な枠組みの中にある泉に注がれています。画面上部左側の神殿内の暗い一角では、ユピテル像の足元の祭壇前で、松明を使った儀式が行われています。この作品、特に前景の人物描写や祭具の表現には、ルーベンスの古代文化に対する深い知識が反映されています。

場面全体は、画面上部に描かれた3人の智天使によって垂らされたタペストリーとして表現されています。中央の果物綱の後ろから垂れるタペストリーは、左右両側の金色の柱礎と柱頭が付いた螺旋柱まで広がっています。タペストリーに見立てた絵画表現は、16世紀にも先例があり、ルーベンス自身も1605年の作品『聖三位一体を礼拝するゴンザーガ家の人々』でこの着想を使っていますが、実際のタペストリーに応用したのはルーベンスの独創性によるものです。

作品が示すもの

この作品は、聖体の秘跡が異教の偶像崇拝を打ち破る力を象徴的に描いています。ルーベンスは、古代ローマの神殿と異教の儀式を背景に、キリスト教の勝利を力強く表現しました。混乱と動揺の中、聖体の光に照らされる人々の姿は、信仰の力を強調しています。

参考文献

山崎正和・高橋裕子『カンヴァス世界の大画家13　ルーベンス』、中央公論社、1982年刊行　ISBN 978-4-12-401903-2

外部リンク

プラド美術館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『偶像崇拝に対する聖体の秘跡の勝利』 （英語）

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