偽りの忠誠 ナチスが愛した女

偽りの忠誠 ナチスが愛した女

『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』（原題：The Exception）は、2016年に製作されたイギリスとアメリカ合作のスパイ映画です。アラン・ジャドが2003年に発表した小説『The Kaiser's Last Kiss』を原作としており、デヴィッド・ルボーにとっては初めての長編映画監督作品となります。主要キャストには、ジェイ・コートニー、リリー・ジェームズ、ジャネット・マクティア、そしてクリストファー・プラマーが名を連ねています。

概要

物語の舞台は1940年。第一次世界大戦後に帝位を追われ、オランダへ亡命したドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が暮らす邸宅です。ここにドイツ国防軍の若き将校が警護のために派遣されますが、彼は同時に「皇帝の動向を監視する」という密命を帯びていました。邸宅で働くユダヤ人のメイドと出会った将校は、互いに強く惹かれ合います。しかし、メイドの正体は、祖国のために任務を遂行するスパイでした。愛と職務、そして激動の時代の中で、将校は困難な選択を迫られます。

あらすじ

1940年5月、ドイツ国防軍大尉シュテファン・ブラントは、オランダのドールン館へ赴任を命じられます。その任務は、ドイツ革命で亡命した元皇帝ヴィルヘルム2世の警護隊指揮官を務めること。しかし、彼にはもう一つの秘密の任務がありました。それは、今なおドイツ国民からの支持が根強いヴィルヘルム2世の動向を、ナチス当局に報告することです。ドールン館に到着したブラントは、屋敷内にイギリスのスパイがいるというゲシュタポからの警告を受けます。

屋敷で働くメイドの一人、ミーケ・デ・ヨンにブラントはすぐに心を奪われます。二人は急速に親密になり、愛し合うようになります。ある日、ミーケはブラントに、自分がユダヤ人であることを告白しますが、彼の愛情は変わりませんでした。

ゲシュタポのディートリヒ警部補は、屋敷周辺の村にイギリス秘密情報部の拠点が隠されていることを突き止めます。この事実を知ったミーケは村へ向かい、牧師に変装したイギリス諜報員と接触。家族を親衛隊（SS）に殺されたミーケは、復讐のため、近々ドールン館を訪問する親衛隊全国指導者ハインリヒ・ヒムラーの暗殺を提案します。

ヒムラーの訪問を前に、ブラントはミーケの部屋から不審な硝煙の匂いを嗅ぎ取り、彼女の正体を疑い始めます。彼女を尾行した結果、ミーケがイギリス諜報員と密会している現場を目撃。ミーケの復讐計画とスパイとしての活動を知ったブラントは、国家への忠誠とミーケへの愛との間で激しく苦悩します。

一方、ブラントとミーケの関係を知ったヴィルヘルム2世の妻ヘルミーネは、ミーケを解雇しようとしますが、ヴィルヘルム2世は自身の過去の出来事もあって、二人の関係を認めます。

ヒムラーが到着した後、逮捕されたイギリス諜報員がミーケがスパイであることを自白します。ブラントはミーケの元へ駆けつけ、求婚しますが、彼女は「やるべきことがある」と答えてその場を離れます。ヒムラーはヴィルヘルム2世に対し、ドイツへの帰国と皇帝への復位を持ちかけますが、これは帝政支持者を一掃するための罠でした。この真実を知ったブラントは、ヴィルヘルム2世の副官に情報を漏らします。

ミーケはヴィルヘルム2世に、イギリス首相チャーチルからの親書を渡します。それは、イギリスへの亡命と戦後の復位を提案する内容でしたが、皇帝は亡命を拒否し、オランダに留まることを選びます。ブラントはミーケをゲシュタポから守り脱出させるため、ヴィルヘルム2世に協力を求めます。皇帝は心臓発作を装って車を呼び、ミーケを車に隠して運び出すことに同意。ブラントはミーケを追ってきたディートリヒ警部補を含むゲシュタポ将校たちを射殺し、屋敷から脱出します。森の中でミーケと再会したブラントは、共にイギリスへ逃げようと誘われますが、彼は病院へ向かう皇帝を守るために申し出を断ります。別れ際、ブラントは再びミーケに求婚し、今度は受け入れられます。

数か月後、ベルリンに戻ったブラントのもとに、ミーケからの手紙が届きます。彼女はチャーチルと面会する予定であり、そしてブラントとの子供を身ごもっていました。手紙を読み終える頃、空襲警報が鳴り響く中、ブラントはオフィスに留まり、来るべき未来を想います。

キャスト

ミーケ・デ・ヨン - リリー・ジェームズ
シュテファン・ブラント大尉 - ジェイ・コートニー
ヘルミーネ・ロイス・ツー・グライツ - ジャネット・マクティア
ヴィルヘルム2世 - クリストファー・プラマー
ハインリヒ・ヒムラー - エディ・マーサン
ジーグルト・フォン・イーゼマン大佐 - ベン・ダニエルズ
* ディートリヒ警部補 - マーク・デクスター

製作背景

本作の映画化は、クリストファー・プラマーのマネージャーでありプロデューサーのルー・ピットが、原作小説をプラマーから紹介されたことがきっかけとなりました。ピットは原作の設定とキャラクターを気に入り、2005年頃から映画化の機会を伺っていたといいます。

2014年5月21日、映画化企画が進行中であることが正式に公表され、第68回カンヌ国際映画祭では、ロータス・エンターテインメントが国際配給権を獲得したことが発表されました。キャスティングは2015年に進められ、5月12日にリリー・ジェームズが、7月7日にジェイ・コートニーがそれぞれ主演に決定。9月11日にはジャネット・マクティアとエディ・マーサンの出演も発表されました。主要撮影は同日、ベルギーで開始され、約6週間（33日間）にわたって行われました。

完成後、第41回トロント国際映画祭のスペシャル・プレゼンテーション部門で初上映され、2016年10月にはA24とDirecTV Cinemaがアメリカでの公開権を取得。アメリカでは2017年6月2日に劇場公開されました。

評価

批評家からの評価は概ね肯定的でした。映画評論サイトRotten Tomatoesでは、48件のレビューに基づき支持率77%、平均評価6.3/10を獲得。「クリストファー・プラマーによる素晴らしい演技と、才能あるキャスト陣によって、ロマンス、戦争、ドラマの要素が絶妙に融合している」と評されています。また、Metacriticでは16件の批評に基づき、100点満点中60点のスコアが与えられています。

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