偽りの花園 (映画)

『偽りの花園』（原題：The Little Foxes）は、1941年、ウィリアム・ワイラー監督によって世に送り出されたアメリカ映画の名作です。舞台は20世紀初頭のアメリカ南部。リリアン・ヘルマンによる戯曲『子狐たち』を映画化した本作は、1939年の初演ではタルラー・バンクヘッドが主演を務めていましたが、映画版ではベティ・デイヴィスが主人公レジーナ・ギデンズを演じ、その圧倒的な演技で観客を魅了しました。

物語の中心は、巨万の富を築いたギデンズ家です。主人公レジーナは、裕福な生活を送る一方で、より大きな富と権力を渇望する貪欲な女性です。彼女は、病弱な夫ホレースを操り、家族や周囲の人間を巧みに利用して、自分の野望を達成しようとします。レジーナは、綿花王国の礎を築き上げた兄たちや、その息子たちを巻き込み、金銭がらみの複雑な策略を巡らせます。

レジーナの娘アレクサンドラは、母親の冷酷な振る舞いに心を痛め、そんな母親と対照的な温かい心を持ちます。アレクサンドラは、レジーナの策略に巻き込まれそうになりながらも、真実を見極めようとします。一方、レジーナの甥レオは、彼女に利用されながらも、葛藤を抱えながら生きています。

映画では、レジーナを取り巻く家族や周囲の人々の様々な思惑や人間関係が複雑に絡み合い、人間の欲望の深淵が浮き彫りにされます。財産、権力、そして愛をめぐる争いは、観る者の心を揺さぶる緊迫感と、人間の本性を鋭くえぐる重厚なドラマを生み出しています。

ベティ・デイヴィスは、冷酷で計算高く、しかしどこか脆さも感じさせるレジーナを完璧に演じきりました。彼女の演技は、アカデミー主演女優賞ノミネートに値する、まさに圧巻の一言です。また、テレサ・ライト演じるアレクサンドラや、パトリシア・コリンジ演じるバーディなど、周りの登場人物たちもそれぞれに個性的で魅力的なキャラクターとして描かれています。

『偽りの花園』は、単なるメロドラマではなく、人間の深層心理に迫る重厚な人間ドラマです。家族愛、裏切り、野望、そして贖罪といった普遍的なテーマが、20世紀初頭のアメリカ南部という時代背景と見事に融合し、観る者の心に深く刻まれる作品となっています。アカデミー賞では作品賞を始め、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、脚色賞など、数々の部門にノミネートされ、その高い評価が証明しています。

この映画は、登場人物たちの巧みな駆け引きや、時代背景を反映した豪華なセット、そしてベティ・デイヴィスの圧倒的な演技によって、最後まで目が離せない、手に汗握る展開が続きます。アメリカ映画史に残る名作として、今なお高い評価を得ている理由が、この作品を観ればきっと理解できるでしょう。

主要キャストは以下の通りです。

レジーナ・ギデンズ：ベティ・デイヴィス（日本語吹替：瀬能礼子）
ホレース・ギデンズ：ハーバート・マーシャル（日本語吹替：木村幌）
アレクサンドラ・ギデンズ：テレサ・ライト（日本語吹替：弥永和子）
デヴィッド・ヒューイット：リチャード・カールソン
レオ・ハバード：ダン・デュリエ
バーディ・ハバード：パトリシア・コリンジ
ベン・ハバード：チャールズ・ディングル
オスカー・ハバード：カール・ベントン・リード

スタッフは、監督にウィリアム・ワイラー、製作にサミュエル・ゴールドウィン、脚本にリリアン・ヘルマン、音楽にメレディス・ウィルソンといった豪華な顔ぶれが名を連ねています。撮影はグレッグ・トーランド、編集はダニエル・マンデル、美術はスティーブン・グーソン、衣装はオリー＝ケリーが担当しました。

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