傅岐

傅岐（ふ き）

傅岐（生年不詳 - 549年）は、南朝梁の時代の官僚であり、字は景平と称しました。彼は北地郡霊州県を本貫としていました。

生涯

傅岐は傅翽（傅琰の子）の子として生まれました。はじめは国子明経生として学問に励み、南康王左常侍を最初の役職とし、その後、行参軍に転じ、尚書金部郎も兼任しました。母の死をきっかけに一度職を離れ、喪に服しましたが、喪が明けた後も、病に伏せることが多くありました。普通2年（521年）には、北郊の壇を改築するプロジェクトにおいて、傅岐が監知繕築に任命され、建築事業の指揮を執りました。事業が完了すると、その功績により始新県令に任じられました。

始新県では、民衆間の争いが絶えず、死者が出る事態も発生していました。死者の家族が郡に訴え出ると、郡はその仇を逮捕しましたが、取り調べが終わっても判決が下されず、裁判は県に移管されました。傅岐は被告の枷を外させ、穏やかな言葉で事情を聴取すると、被告は自らの罪を認めました。法に基づき死刑判決を下しましたが、冬至の時期には、囚人を一時的に釈放し、自宅で一日を過ごさせた後、再び獄に戻すという措置を取りました。部下の官吏たちは、過去にはそのような慣習があったものの、現在では行うべきではないと反対しましたが、傅岐は「信頼できると判断すれば、県令は安心して職務を遂行できる」と述べ、釈放を強行しました。すると、囚人たちは期日通りに戻ってきました。この出来事に深く感銘を受けた郡太守は、武帝にこのことを報告しました。傅岐が県を離れる際には、その離任を惜しむ人々が数十里にもわたって見送りに来たと言われています。

建康に戻った傅岐は、廷尉正に任じられ、中書通事舎人も兼任しました。その後、寧遠岳陽王記室参軍に転じ、建康県令として再び地方へ赴任しましたが、公務上の事件により免官となりました。しかし、間もなく舎人として復帰し、安西中記室や鎮南諮議参軍などの役職を歴任しました。

傅岐は容姿端麗で立ち振る舞いも美しく、広範な書籍を渉猟し、応答にも優れていました。大同年間には、東魏との和親交渉が行われ、東魏からの使節を迎える際に、武帝は傅岐に応接の任を命じました。太清元年（547年）には、舎人の身分のまま、太僕や司農卿を歴任しました。彼は十数年にわたり禁省に勤務し、機密事項への関与においては朱异に次ぐ存在となりました。同年冬、豫州刺史の貞陽侯蕭淵明が兵を率いて彭城を攻撃しましたが、敗北し東魏に捕らえられました。

太清2年（548年）、東魏に抑留されていた蕭淵明が使者を梁に派遣し、東魏が和平を望んでいることを伝えました。武帝が官僚や近臣たちに議論させたところ、朱异が和平に賛成し、他の者たちもこれに同調しました。しかし、傅岐は「高澄は勢いに乗っており、その力は侮れません。そのような状況で和平を提案するのは、何か裏があるはずです。梁と東魏の間に和平が成立すれば、侯景は自分と蕭淵明の身柄が交換されることを恐れ、反乱を計画するでしょう。今、東魏との通好を許せば、敵の策略に陥ることになります。昨年の彭城での敗戦、そして今年の渦陽での敗北を考えれば、和平に応じることは国家の弱さを示すことになります。和平は許可すべきではありません」と反対しました。しかし、武帝は朱异らの意見を採用し、東魏との和平が成立しました。傅岐が懸念した通り、侯景は疑念を抱き、反乱を計画しました。同年8月、侯景は挙兵し反乱を起こし、10月には長江を渡って建康を攻撃し、朱异の処刑を要求しました。

太清3年（549年）、傅岐は舎人のまま中領軍に転じました。同年2月、侯景が江右4州の割譲と部下の安全を条件に、建康の包囲を解いて江北に帰るという条件で講和を申し出ると、武帝はこれを受け入れました。侯景は城西で盟を立てるにあたり、宣城王蕭大器を人質として送るよう要求しました。傅岐は蕭大器が皇太子の嫡嗣子であることから反対し、代わりに石城公蕭大款を送らせました。侯景との盟が成立すると、城中の文武百官は喜び、包囲が解かれることを信じました。しかし、傅岐は一人、この講和が偽りであると説いたため、人々から恨まれました。その後、侯景の裏切りが明らかになると、人々は傅岐の先見の明に感心しました。武帝は傅岐の功績を称え、南豊県侯に封じようとしましたが、傅岐は固辞しました。同年3月、建康が陥落すると、傅岐は病を抱えながら包囲を脱出し、自宅で亡くなりました。

伝記資料

『梁書』巻42 列伝第36
『南史』巻70 列伝第60

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