備陽六郡志

備陽六郡志（びようろくぐんし）

概要

『備陽六郡志』は、江戸時代中期の福山藩に関する郷土史を記した重要な文献です。著者は福山藩士の宮原直倁で、彼は1702年から1776年までの生涯の中で、1740年頃から約30年間にわたりこの著作を手掛けました。この作品は、備後地方の歴史や文化を後世に伝える貴重な資料とされています。

宮原は建設や土木に関わる職務を担っていましたが、文筆業には直接の関わりがない人物でした。それにもかかわらず、彼は地域の歴史への熱意から多くの古今の文献を集めました。特に、彼は信頼していた地元の庄屋や浪人から古い史料を託され、それを基にしながら、市民からの伝聞や独自の調査を通じて書き進めていきました。

記載されている六郡には、深津郡、安那郡、芦田郡、品治郡、沼隈郡、そして分郡が含まれています。この作品は、2000年に福山市の重要文化財として指定されました。

構成

『備陽六郡志』は構成が非常に詳細で、内篇（14巻）、外篇（15巻）、後得録（5巻）、六郡志（3巻）、六郡外志（6巻）、附録（1巻）から成っています。原本は44冊の冊子本からなり、サイズは縦23cm、横16cmです。

• - 内篇：主に上月文書を巧みに配置し、著者が一切筆を加えていないとされています。
• - 外篇：著者自身が現地を訪れた際の古文書や古記録、金石文、伝説などが資料とされ、郡村別に整理されています。
• - 後得録、六郡志、六郡外志、附録はそれぞれ異なる視点や情報を提供しています。

活字化

著者の手稿は、その末裔である宮原國雄氏から福山義倉図書館に寄贈されました。また、写本も旧制福山中学校の関係者により同図書館に寄贈されました。1927年に郷土史家の得能正通が原本を数度にわたり借用し、活字製本化を進めました。この結果、1930年には『備後叢書』に収録され、正式に出版されました。

参考文献

• - 福山市史編纂委員会による『福山市史＜中巻＞』、1968年
• - 猪原薫一の『備陽六郡志の著者宮原直倁』（『人物広島史』）、1956年

『備陽六郡志』は、地域の歴史を深く知るための貴重な文献であり、今後も研究の基礎資料として利用されていくことでしょう。

もう一度検索