傷だらけの勲章

傷だらけの勲章

『傷だらけの勲章』（きずだらけのくんしょう）は、1986年5月17日に公開された日本映画です。本作は東宝企画およびファインズ・コーポレーションによって製作され、東宝の配給で公開されました。

概要と製作背景

本作は、エジプトで発生した大手企業社長の暗殺事件を追う一人の刑事の活躍を描いたポリスアクション作品です。特に注目されるのは、当時人気絶頂だった歌手・西城秀樹が、前作から11年ぶりに映画の主演を務め、本格的なハードアクションシーンに挑戦したことです。物語の舞台は灼熱の国エジプトであり、スフィンクスやピラミッド、カイロといった象徴的な場所での撮影が敢行されました。

特筆すべきは、本作が日本映画として初めてエジプトでの大規模なロケーション撮影を実現したという点です。1985年の10月から12月にかけて、異国情緒あふれるエジプトで撮影が行われ、その壮大な風景が物語に深みを与えています。また、一部のシーンは東南アジアのシンガポールでも撮影されました。

出演者では、1984年の第1回東宝シンデレラオーディションで審査員特別賞を受賞した藤代美奈子の映画デビュー作としても記録されています。

ストーリー

物語は、エジプトで発生した一流企業の社長射殺事件を軸に展開します。事件の背後には、行方不明となった遺言書を巡る複雑な人間関係や、遺族・関係者の間で次々と起こる不可解な出来事がありました。主人公である刑事、都築明（西城秀樹）は、この難事件の真相を解明するため、遠く離れたエジプトへと派遣されます。

砂漠の広がる荒野、古代遺跡、そして活気あふれる首都カイロを舞台に、都築刑事は捜査を進めます。この過程で、彼は様々な困難や危険に直面し、事件の核心に迫ると同時に、人間的にも大きく成長していきます。本作は、単なるアクションにとどまらず、異国の地で繰り広げられる緊迫した捜査と、主人公の内面の変化を描いた本格的なポリス・アクションドラマとして構成されています。

スタッフとキャスト

本作の製作には、日本映画界のベテランスタッフが集結しました。

監督は『積木くずし』などを手掛けた斎藤光正が担当。

脚本は『カポネ大いに泣く』で知られる大和屋竺が執筆。

撮影は『夢千代日記』の安藤庄平が担当し、エジプトの壮大な風景を捉えました。

その他、音楽は佐藤準、音楽監督は宮崎尚志が担当しています。

主要なキャストとしては、主演の西城秀樹のほか、ちあきなおみ、朝加真由美、藤代美奈子、成田三樹夫、萩原流行、深水三章、小林稔侍、竜雷太、鈴木瑞穂、仲谷昇、小林昭二、下元勉、左時枝、高橋幸治、中村嘉葎雄といった実力派俳優陣が出演し、物語に深みを与えています。

サウンドトラック

映画の公開と同時に、オリジナル・サウンド・トラックがLPレコードとCDで発売されました。このサウンドトラックには、主題歌である国分友里恵が歌う『流れるままに〜落花流水〜』を含む多数の楽曲が収録されています。主題歌以外の楽曲は、すべて本作の音楽を担当した佐藤準が作曲・編曲を手掛けており、映画の緊迫したアクションシーンやエジプトの雰囲気を音楽面から盛り上げています。収録曲には、『ワルサーの顔〜殺しのテーマ〜』、『カイロの朝』、『ピラミッドの下の告白』など、物語や舞台を連想させるタイトルが多く含まれています。

このように、『傷だらけの勲章』は、日本映画としては画期的な海外ロケーションと、主演・西城秀樹の新たな挑戦、そしてサスペンスフルなストーリー展開が融合した、記憶に残る一作と言えるでしょう。

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