僕が宇宙に行った理由

『僕が宇宙に行った理由』は、2023年に製作・公開された日本のドキュメンタリー映画です。株式会社ZOZOの創業者である実業家、前澤友作氏が日本の民間人として初めて国際宇宙ステーション（ISS）に滞在した際の記録に密着しており、その宇宙旅行に実際に同行した平野陽三氏が監督を務めました。宇宙へ渡航した人物自身が撮影を行い、その映像を基に映画を監督した作品は、日本国内ではこれが初めてとなります。

あらすじ

物語は、幼少期にハレー彗星を観測して以来、宇宙に強い関心を抱いてきた前澤友作氏の視点から展開します。2015年、民間人でも宇宙旅行が可能になったことを知った彼は、宇宙への旅を実現するためのプロジェクトを始動させます。映画では、宇宙飛行に向けた過酷な検査やトレーニングの様子が描かれ、そしてついに2021年、前澤氏らが搭乗した宇宙船「ソユーズ」が国際宇宙ステーションへと旅立つ瞬間が捉えられます。宇宙での12日間にわたる滞在を経て、無事地球へ帰還するまでの一部始終が、ドキュメンタリーとして克明に追われています。

出演

本作には、主要人物として前澤友作氏と監督の平野陽三氏が出演しています。また、共に宇宙へ向かったアレクサンダー・ミシュルキン氏をはじめ、山崎直子氏、小木曽詢氏らも登場します。

撮影

宇宙での撮影は、前澤氏に同行し記録を担当した平野陽三氏が、ロスコスモスやNASAでの専門講習を受けた上で実施されました。宇宙環境下での撮影には、規格を満たすテストを経たソニー製カメラ2台のほか、GoProやiPhoneが用いられています。打ち上げ時は手持ち撮影が禁止されたため、ソユーズの操縦席にGoProを設置して記録されました。

平野氏によると、無重力下では機材の重さを感じず疲労は少ない一方、身体が浮遊するため手すりなどで固定が必要でした。ISSでは電力は生活や実験に優先され、コンセントはなくパワーコンディショナー経由での充電は非常に遅く苦労を伴いました。また、SDカードの制限や古いハードディスクによるデータ管理の困難さもあり、常に容量のやりくりが求められました。帰還モジュール軽量化のため、撮影機材は全てISSに残されました。

制作

当初映画化の予定はありませんでしたが、帰還後のウクライナ侵攻を受け、宇宙から見た地球に国境がないという平和への思いを形にすることを決意。元々監督を志していた平野氏が前澤氏に映画化を打診し、記録映像を作品として完成させました。制作は2022年5月のニューヨークでの追加撮影から本格化しました。

見どころのロケット打ち上げシーンでは、平野監督が音響にこだわり、観客がバイコヌール宇宙基地にいるかのような臨場感を追求しました。メインビジュアルには、ISSのキューポラで地球を背景に廻る前澤氏の姿が使われています。

公開

2023年11月27日、TOHOシネマズ日本橋で完成披露上映会が開催され、前澤氏がフライトスーツ姿で登場し、その保管エピソードを披露しました。前澤氏は挨拶で、夢の実現、地球の美しさ、平和へのメッセージを語りました。

映画は2023年12月29日に全国劇場公開。初日舞台挨拶がTOHOシネマズ日比谷で行われました。公開に先立ち、11月27日から12月3日まで日本橋三井タワーで、実際に使用されたソユーズ帰還モジュールやフライトスーツが日本国内で初めて一般公開されました。また、12月26日から30日には東京ミッドタウンで特別展も開催。公開直前には、学生向けのティーチインイベントも実施されました。

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