僕散思恭

僕散思恭（ぼくさん しきょう）

僕散思恭（生年不詳 - 1161年）は、金朝の女真族出身の貴族であり、軍人としても活動しました。元々の名前は忽土（忽土）といいました。彼は、金朝の第4代皇帝である熙宗（きそう）を殺害したとされる実行犯の一人として知られています。元々は遼王であった宗幹（そうかん）の家臣でした。

生涯

出自は貧しかったとされていますが、宗幹に見出され、武将としての道を歩み始めました。宗幹の死後、彼は皇帝のボディーガードの長の一人として熙宗に仕えることになります。宗幹の次男である迪古乃（迪古乃、後の海陵王）から皇帝弑逆の計画を持ちかけられた際、当初は躊躇していましたが、最終的には「君の力が必要だ」という迪古乃の説得を受け入れ、計画に加担することになりました。

皇統9年12月9日（西暦1150年）、熙宗の弑逆事件が発生します。僕散忽土は、熙宗の寝殿に侵入する一団に加わりました。目を覚ました熙宗が侵入者たちを叱咤した際、一同が恐れをなす中、僕散忽土は「事ここに至っては止められない」と言い放ち、丸腰であった熙宗を斬りつけました。その後、去就を決めかねていた平章政事の完顔秉徳（かんがんへいとく）を脅して味方に引き入れ、海陵王に呼び出された曹王宗敏（そうみん、熙宗と海陵王の叔父）を殺害しました。

海陵王が即位すると、僕散忽土は左副点検に任じられ、僕散思恭と改名しました。また、海陵王から多大な財貨を与えられました。貞元3年（1154年）には、右丞相に任命され、政治の中枢を担うことになります。正隆年間には、太尉・枢密使を歴任し、軍事の要職を担いました。

正隆6年（1161年）8月、海陵王は南宋討伐を企てました。この計画に対し、皇太后徒単氏（宗幹の正妻）は海陵王に諫言しましたが、海陵王は「お前は我が母ではない、宋国王の妾だ」と罵りました。その後、皇太后の侍女である高福娘（こうふくじょう）が、皇太后が代王の家族と通謀していると海陵王に密告しました。この頃、僕散思恭は契丹への遠征に参加していましたが、皇太后への別れの挨拶が長かったため、海陵王は彼に猜疑心を抱きました。海陵王は、皇太后が南宋討伐に乗じて自身の廃立を企んでいるのではないかと疑い、皇太后を殺害しました。代王の男子のうち2人は逃亡しましたが、残りの2人は捕らえられ処刑されました。契丹から召還された僕散思恭は、一族もろとも処刑されることとなりました。処刑の際、口を縄で覆われ、発言できない状態にされた上で斬られたと伝えられています。

脚注

* 伝記資料：『金史』巻132 列伝第70

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