儒林外史

『儒林外史』について

『儒林外史』（じゅりんがいし）は18世紀の中国、清代中期に著された白話小説で、呉敬梓によって創作されました。この作品は、科挙という官僚試験が重要視されていた時代背景を反映し、当時の人々がその制度に翻弄される様子を活写しています。特に、登場人物の一人である杜少卿には作者自身の影が見て取れるとされています。

構成と形式

本作品は、全55回から成り立っており、各エピソードがオムニバス形式で展開されるスタイルをとっています。つまり、一つの物語内の登場人物が次のエピソードに引き継がれ、その中で新たなキャラクターが登場するという形となっています。このような構成は、従来の長編白話小説にはあまり見られないユニークな特徴であり、作家自身の創造的アプローチを示しています。また、作品には「第56回」として記された部分も存在しますが、これは後世の偽作とされており、作品本体の一部とは認められていません。

最古の刊本は1803年に出版され、後に影響を与える作品として『海上花列伝』や『官場現形記』などが挙げられます。これらは社会風俗や時流を描く作品として知られ、エピソードのつながりという『儒林外史』の手法を継承しています。

文献と評価

『儒林外史』を研究する日本語文献も存在しています。例えば、稲田孝訳による『儒林外史 中国古典文学大系43』や、須藤洋一の『儒林外史論　権力の肖像、または十八世紀中国のパロディ』などがあり、いずれも作品の深い解釈や社会的背景について分析しています。

この作品は、亡命作家である魯迅に高く評価されており、彼は本作の社会風刺的な側面が持つ重要性を強調しました。そのため、『紅楼夢』と並べて中国近代文学に及ぼした影響の大きさが語られることもあります。しかし一方で、魯迅の評価に対して「脱俗を気取った体制擁護にすぎない」とする批評も存在し、作品の位置付けについては様々な意見が存在します。

最後に

『儒林外史』は、科挙が持つ意味、そこで生きる人々の姿を描写しながらも、社会への批評的視点を忘れません。古典文学の中でも特に魅力的な作品として、多くの読者に愛され続けています。

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