優&魅衣

あろひろし氏が手掛けた日本の漫画作品、『優&魅衣』について解説します。

本作は、集英社の『月刊少年ジャンプ』にて、1983年9月号に読み切りとして初掲載された後、1984年12月号から1988年7月号にかけて連載されました。また、『月刊少年ジャンプオリジナル』の増刊号にも、1988年2月・5月号に外伝が、1989年2月号には番外編が掲載されています。作品の人気を受け、1987年 9月25日にはワーナー・パイオニアよりイメージアルバムも発売されました。

あらすじ

物語は、田舎から都会にある「寸鯉（すんごい）学園」へ転校してきた高校生、相夢優が、奇妙な下宿先「矢荷成荘（やになりそう）」に住むことから始まります。そこで優は、不本意ながら幽霊の少女・魅衣と同居することに。しかし、矢荷成荘の住人は魅衣だけでなく、皆一様に異常かつ非常識な人物ばかり。優は個性豊かな面々に囲まれ、憂鬱な毎日を送ることになります。しかし、実は彼自身も、ある異常な体質の持ち主だったのです。

主な登場人物

矢荷成荘の住人
優が下宿することになる矢荷成荘には、一癖も二癖もある住人たちが暮らしています。彼らのほとんどが酒好きで、何かにつけて宴会を開くのが常。家賃の滞納も頻繁で、大家にとっては悩みの種（あるいは生き甲斐）となっています。

相夢優（あいむユウ）
本作の主人公。高校2年生。田舎から寸鯉学園へ転校し、矢荷成荘201号室に下宿します。奇妙な住人たちに悩まされますが、実は彼自身も普段かけている丸メガネを外すと野生化して暴れ出す特異体質を持っています。温和で頼まれごとを断れない性格ですが、過酷な環境で育ったため、メガネ着用時でも驚異的な身体能力を発揮します。魅衣のトラブルで留年した後に、寸鯉学園の治安委員長や南部番長連合総長となります。
魅衣（ミイ）
幽霊の少女。明るくイタズラ好きな性格で、幽霊らしからぬ存在です。空を飛ぶ、物を透過する、姿を消す、憑依能力など、様々な能力を持ちます。優と同室に住み着き、物語の中心的なトラブルメーカーとなります。生前については多くの謎に包まれていましたが、終盤で本人も記憶を失っていたことが判明します。
大矢藍（おおやアイ）
矢荷成荘の大家の娘。優のクラスメートでしたが、優の留年で学年が離れます。真面目で心優しく、ミス寸鯉に選ばれるほどの美貌の持ち主。自宅では鍛錬のためか重いプレートアーマーを着用しており、怪力です。優に想いを寄せています。
大矢雄也（おおやオヤ）
藍の父親で矢荷成荘の大家。娘とは異なり、常に甲冑姿で素顔を見せません。本職は銀行支店長で、大家業は趣味。家賃取り立てを生き甲斐とし、期限切れの家賃は帳消しにする独自のルールを持ちます。
小倉杏（おぐらアン）
202号室の住人。少女漫画家ですが、角刈りに学ランという応援団員のような外見です。部屋は本とゴミで埋め尽くされており、締め切り破りが日常茶飯事。担当編集者との攻防はもはや忍術合戦のようです。人気作家ながら貧乏な理由は、番外編で明かされます。
日向輝明（ひなたテルアキ）
203号室の住人。名前とは裏腹に、外見も性格も極めて暗い人物です。自殺の名所巡りや呪いが趣味。虚弱そうな見た目とは裏腹に、超人的な身体能力を隠し持っています。落ち込むと地球の自転に取り残されるという特技を持ち、「マッハで静止する男」と呼ばれます。
無頼出真理（ぶらいでマリ）
205号室の住人。デパート勤務のキャリアウーマン。かつて「ブラディ=真理」のリングネームを持つ女子プロレスラーでした。現役を離れてもトレーニングは欠かさず、怪力は健在。過去を隠すため、常に覆面レスラーマスクを着用しています。寸鯉学園の卒業生でもあります。
剛田業（ごうだカルマ）
206号室の住人。初登場時20歳。身長110cm。難関中学を受験し続けるも、連載中に10浪に突入。合格まで髪を切らない願掛けの結果、全身が体毛に覆われモップのような姿になりました。学力は高いですが、机アレルギーで勉強机に座ると爆発するため、受験ができません。番外編では中学入学後の姿が描かれます。漫画家・毛羽毛現がモデルとされています。
長老
本名不明。矢荷成荘に300年間住み続けるマペットのような老人。独特の装束をまとい、パンティーを被っています。矢荷成荘の歴史に非常に詳しく、150巻に及ぶ大著「矢荷成荘全史」を執筆しています。
綾町迷子（あやまちマイコ）
綾町財閥の孫娘で、寸鯉学園1年生。外見・精神年齢が実年齢より幼く見えます。両親を亡くしていますが、地球外生命体の血を引き、尻尾があり、満月で兎娘に変身する体質です。魅衣が憑依した優に助けられて以来、優に想いを寄せ、変身体質を隠すため矢荷成荘へ引っ越してきます。
池内朱人芽丸（いけうちアトメマル）
池内グループの次期当主。学生服にチョンマゲ姿。綾町迷子との政略結婚を目論んで矢荷成荘に住み始めます。魅衣も気に入り、愛人にしようとします。世間知らずな金持ちの息子ですが、細かいことは気にしません。常に執事隊を引き連れています。

相夢家
優を含む家族全員が、普段は眼鏡で本能を抑え込んでいますが、眼鏡が外れると理性を失い、それぞれ異なる本能が暴走します。

相夢由和（あいむユワ）
優の姉。厳格な性格。眼鏡が外れると種族保存本能が暴走します。
相夢湯杏（あいむユアズ）
優の父。豪快な人物で酒豪。眼鏡が外れると自己防衛本能が暴走し、極端に臆病になります。
相夢夕（あいむユウ）
優の母。貞淑な女性。優と同音名の為、夫には「お夕」と呼ばれています。眼鏡が外れると食欲が暴走します。

物語の舞台

矢荷成荘（やになりそう）
優が下宿する木造2階建ての建物。正確な部屋数は不明。トイレは共同で、風呂は大家専用のため、住人は銭湯を利用します。家賃は安価ですが、多くの住人が酒代に消えて滞納しています。住人による宴会や大家との家賃攻防戦が頻繁に繰り広げられ、特に年末年始の耐久宴会は地域の風物詩となっています。廊下の奥は果てしなく続いており、古い住人が住み続けていると言われています。
寸鯉学園（すんごいがくえん）/寸鯉高校（すんごいこうこう）
優たちが通う高校。矢荷成荘から約20km離れています。作中何度も破壊され、その度に飛行や巨大ロボットへの変形・合体などの機能が追加されていきます。魅衣が引き起こした怪異により校舎が崩壊し、優が責任を取って留年する原因となりました。初期は「学園」、終盤は「高校」と改名されています。
相夢家
優の実家。日本最大の秘境とも言われる山奥に位置し、凶暴な生物が徘徊するような環境です。電気や電話は通じていませんが、裏山からの原油で自家発電を行い、狼煙で外部と連絡を取っています。

イメージアルバム

1987年に発売されたイメージアルバムは、「イメージカプセル」というブランドで制作されました。このブランドのアルバムは制作スタッフが共通していることが多く、楽曲構成やBGMの流用といった特徴が見られます。本作のアルバムでも、他のイメージカプセル作品（『エルフ17』、『究極超人あ〜る』、『星の瞳のシルエット』など）や、『超新星フラッシュマン』のBGMが流用されており、逆に本作の楽曲が『あ〜る』に流用される例も見られました。

単行本

ジャンプ・コミックス（集英社） 全8巻
* ジャンプコミックスセレクション（ホーム社発行・集英社発売） 全5巻

本作は、個性的なキャラクターたちのドタバタ劇と、主人公が巻き込まれる騒動を通して描かれるコメディであり、あろひろし氏の初期の代表作の一つとして知られています。

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