儲光羲

儲光羲（ちょ こうぎ）

儲光羲（707年 - 763年）は、中国唐代の詩人です。潤州延陵県（現在の江蘇省常州市一帯）の出身。

生涯

開元14年（726年）に進士に及第し、官吏としての道を歩み始めました。順調に出世を重ね、至徳元載（756年）には監察御史という要職に就きます。

しかし、その頃、唐王朝を揺るがす大事件、安禄山の乱が勃発します。戦乱の中で、儲光羲は賊軍（安禄山軍）から官位を授けられてしまいます。これが後に災いし、乱が平定された後、彼は反逆者として嶺南（現在の広東省・広西チワン族自治区一帯）へ流刑に処されることとなりました。失意のうちに、その地で生涯を終えたと伝えられています。

詩人として

儲光羲は、詩人として非常に高い評価を受けています。彼の詩風は、東晋時代の詩人・陶淵明を模範としたもので、飾らない素朴さと、古風で雅やかな趣が特徴です。特に田園の風景や生活を題材とした詩に優れており、王維、孟浩然、韋応物といった著名な田園詩人と肩を並べたと評されています。

彼の作品は、自然を愛し、隠遁生活を好んだ陶淵明の影響を強く受けています。名利を求めず、自然の中で静かに生きることを理想とした陶淵明の精神は、戦乱と流刑という不遇な人生を送った儲光羲の心に深く響いたのかもしれません。

代表作としては、『儲光羲詩集』5巻の他、『正論・九経分義疎』があります。また、『唐詩選』には、「洛陽道」をはじめとする絶句4首が収録されており、彼の詩の一端に触れることができます。

儲光羲の詩は、平易な言葉で書かれているにもかかわらず、深い情感と人生観が込められています。自然の美しさや、人間の心の機微を繊細に描き出し、読者の心に静かに語りかけるような魅力を持っています。彼の作品は、時代を超えて、今もなお多くの人々に愛され続けています。

その作風から、必ずしも恵まれた人生ではなかったことが伺えます。官吏として活躍しながらも、戦乱に巻き込まれ、流刑に処されるという不遇な晩年。しかし、その経験が、彼の詩に深みと奥行きを与えたとも言えるでしょう。苦難を乗り越え、自然と向き合いながら生きた彼の姿は、多くの人々に勇気と希望を与えてくれるはずです。

もう一度検索