陶淵明

陶淵明（とう えんめい）

陶淵明（365年 - 427年）は、中国の魏晋南北朝時代に活躍した文学者です。字は元亮。または名は潜、字が淵明。靖節先生、五柳先生とも呼ばれます。尋陽郡柴桑県（現在の江西省九江市柴桑区）の出身で、郷里に隠遁し、自ら農作業に従事しながら、日常生活に根ざした詩文を多く残しました。後世には「隠逸詩人」「田園詩人」として知られています。

生涯

陶淵明は下級士族の出身であり、若い頃には何度か官職に就きましたが、いずれも短期間で辞任し、最終的には故郷に帰って隠遁生活を送りました。彼の詩には、田園での生活や自然への愛着、世俗からの離脱などがテーマとして描かれています。

出仕と隠遁

陶淵明は、経済的な理由から何度か官職に就きました。

太元18年（393年）：江州祭酒として出仕するも短期間で辞任
隆安3年（399年）：江州刺史桓玄に仕えるも、隆安5年（401年）に母の喪に服すため辞任
元興3年（404年）：鎮軍将軍劉裕に参軍（幕僚）として仕える
義熙元年（405年）：彭沢県令となるが、80数日後に辞任して帰郷

彭沢県令を最後に、陶淵明は二度と出仕せず、隠遁生活を送りました。廬山の慧遠に師事した周続之、匡山に隠棲した劉遺民とともに「尋陽の三隠」と称されました。

隠棲後の生活

隠棲後も、陶淵明は詩作を続けました。義熙4年（408年）には火事で家を失い、船で生活する時期もありました。義熙7年（411年）には南村に住居を移しましたが、同年、従弟の陶敬遠を亡くしました。東晋および南朝宋の朝廷から招かれましたが、全て応じませんでした。元嘉4年（427年）に63歳で亡くなりました。

家族

陶淵明は2度結婚し、5人の息子がいました。

文学作品

陶淵明の作品は、詩・散文合わせて130余首が現存しています。特に「田園詩」と呼ばれる一連の作品は、江南の田園風景を背景に、世俗を離れた晴耕雨読の生活を主題としており、理想の隠逸生活の体現として高く評価されています。

特徴

陶淵明の詩は、以下の点で特徴付けられます。

日常に根ざした表現: 隠逸生活を観念的なものではなく、自らの体験に基づいた具体的なものとして描いている。
豊かな抒情性: 世俗を離れた生活の喜びや悲しみを、率直な言葉で表現している。
飾り気のない表現: 魏晋南北朝時代の華麗な表現を避け、素朴で自然な言葉を用いている。

主要作品

帰去来の辞: 彭沢令を辞任した際に書かれた、隠遁生活への決意表明
桃花源記: 東洋のユートピアを描いた作品で、桃源郷の語源となった
五柳先生伝: 自伝的作品

逸話

陶淵明は無弦の琴を愛で、酔うとそれを撫でて心の中で演奏を楽しんだという逸話があります。この無弦の琴は、老荘思想における「無用の用」の思想を象徴するものと解釈されています。

後世への影響

陶淵明の作品は、唐代以降の詩人たちに大きな影響を与えました。特に、王維や孟浩然といった田園詩人たちは、陶淵明の詩を模範とし、自然や田園生活をテーマにした作品を多く残しました。また、陶淵明の生き方は、世俗を離れて自然の中で生きることを理想とする人々に、大きな Inspiration を与え続けています。

著名な作品

飲酒（其五）
帰園田居
桃花源記
五柳先生伝
* 帰去来の辞

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