元和郡県志

『元和郡県志』の概要とその重要性

『元和郡県志』は唐時代に編纂された地理書であり、現存する唐代の全国的な地誌として非常に貴重な存在です。この書物は、和帝の治世である元和8年（813年）に宰相の李吉甫によって完成され、当時の憲宗に進呈されました。元々は『元和郡県図志』という名で、47の鎮について図が添付されていましたが、残念ながらその図は後に失われてしまいました。元の構成は40巻であり、現在確認できるのは34巻ですが、いくつかの巻は欠落しています。

編纂の背景

李吉甫は、過去の地理書が古い内容ばかりに偏り、現代の重要な事象や政治に関する情報が欠如していることに危機感を抱いていました。このため、彼は新たな地理書の編纂を手掛け、当時の地理、人口、貢納制度などを詳細に記録することを目指しました。

『元和郡県志』は全国を十道に分け、それぞれの地域での府や州、県の戸数や位置、地理的な特徴、貢納制度などが詳述されています。特に、各地の支配者（節度使）が管理する領域についても言及されており、当時の権力構造を知る手助けとなります。最後に記された隴右道は、当時は吐蕃の支配下にあった地域です。

現存の問題

現在『元和郡県志』として知られている書物は、いくつかの巻が欠落しており、具体的には巻19、20、23、24、26、36が失われています。これらの欠落は、資料の収集と保存の過程で避けられないものでした。従って、現在の四庫全書本の構成は、残された巻に基づいて再編成されたもので、欠けた巻が新たに発見されたわけではありません。

また、繆荃孫による『元和郡県志闕巻逸文』は、欠落した巻に関する情報を編集してまとめた書であり、失われた部分を少しでも補完する試みとして注目されています。

内容の詳細

『元和郡県志』の情報は、各道ごとに細かく分類されており、以下のように構成されています：

• - 関内道（巻1-4）
• - 河南道（巻5-11）
• - 河東道（巻12-15）
• - 河北道（巻16-19）　※巻19は欠落
• - 山南道（巻20-23）　※巻20と23は欠落
• - 淮南道（巻24）　※欠落
• - 江南道（巻25-30）　※巻26は欠落
• - 剣南道（巻31-33）
• - 嶺南道（巻34-38）　※巻36は欠落
• - 隴右道（巻39-40）

このように構成された『元和郡県志』は、過去と現代の地理をつなぐ重要な役割を果たし、また国家の資源的な状況や人口動態、地理的特徴を知るうえでも貴重な資料となっています。特に、8世紀初頭の開元戸と9世紀初頭の元和戸を記載していることで、当時の人口や社会の変遷を理解する手がかりを与えてくれるでしょう。

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