節度使

節度使（せつどし）について

節度使は、中国の古代に存在した官職であり、特に唐代において重要な役割を果たしました。その名称は「節を度する使」という意味を持ち、皇帝の代理として軍事権を掌握し、地方の行政を統括する権限を持っていました。

節度使の起源と発展

節度使の制度は、唐の睿宗の時代、711年に初めて登場しました。この職に任命されると、朝廷から「旌節」と呼ばれる旗印が与えられ、管轄地域の軍事を統制する権限を与えられました。唐代初期には、律令制に基づいた府兵制が採用されていましたが、次第にその制度が崩壊し、傭兵制度が台頭するようになります。このような状況下で、玄宗の時代（713年 - 741年）には、辺境の要衝である朔方、隴右、河東・河西などの10の鎮に節度使が設置されました。

安史の乱と節度使の拡大

755年に勃発した安史の乱を契機に、節度使は内地にも拡大していきます。乱の鎮圧のため、各地に節度使が設置され、その数は40から50にも達しました。これらの節度使は、単に軍事を統括するだけでなく、按察使、安撫使、度支使などの役職を兼任し、管轄する「道」の軍事、民政、財政を掌握するようになりました。一部の節度使は、河北道節度使のように独立勢力化する動きも見られ、中央政府の統制が及ばなくなる事態も発生しました。

節度使の衰退と変遷

節度使の権限が拡大するにつれ、唐の中央政府は次第に弱体化し、節度使は唐の衰退の大きな要因の一つとなりました。憲宗の時代には、節度使の権限を制限する動きも見られましたが、唐の衰退を食い止めることはできませんでした。唐滅亡後、五代十国時代には、各地の節度使が自立して政権を樹立し、国内でさらに節度使を分立させるなど、専横を極めました。

宋代に入ると、初代皇帝の趙匡胤は節度使の権限を回収し、地方行政を中央集権化しました。それ以降、節度使は将帥や大臣、皇族などの功績を称えるための名誉職となり、実質的な権限を失いました。遼や金などの王朝でも節度使は設置されましたが、元代には完全に廃止されました。

日本における節度使

なお、日本においても、節度使という官職が存在しましたが、中国の節度使とは異なり、地方の軍事を管轄する役職ではなく、主に臨時の使節や使者の役割を担いました。

まとめ

節度使は、唐代の軍事・行政制度において重要な役割を果たした官職であり、その変遷は中国の歴史の流れを理解する上で欠かせない要素です。節度使の制度が、唐の盛衰や五代十国時代の混乱、そして宋代の中央集権化に大きな影響を与えたことは、歴史を学ぶ上で非常に興味深い事実と言えるでしょう。

参考文献

『中国歴史文化事典』p595（主編：孟慶遠、訳：小島晋治・立間祥介・丸山松幸、新潮社、1998年）
『角川世界史辞典』p325（角川書店、西川正雄・川北稔・小谷汪之・佐藤彰一・高橋昌明・南塚信吾・安井三吉・湯川武・阿部謹也編、2001年）

関連項目

節度使 (日本)
阿倍仲麻呂 - 安南節度使を務めた。

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