元気です!

『元気です!』

1980年10月6日から1981年4月3日にかけて、TBS系列のテレビドラマ枠『ポーラテレビ小説』で放送された連続テレビドラマ。全26週、全130回。明治時代初期の混乱期を背景に、過酷な運命に翻弄されながらも懸命に生き抜く若者たちの姿を描く。

物語は明治7年、日本の近代化が進む一方で不平士族の反乱が燻る時代から始まる。廃藩置県や征韓論を巡る政情不安が高まる中、土佐の不平士族による岩倉具視襲撃事件が発生。計画に失敗した一味は追手から逃れる途中、偶然立ち寄った医者の家に押し入り、手当を強要する。抵抗する医師夫婦を惨殺するが、その息子である井沢信吾は反撃し、犯人の一人を射殺。これにより、信吾とその妹・あやは事件の容疑者として追われる身となり、父の家に仕えていた聾唖の使用人・海之助と共に、海之助の故郷である土佐へと落ち延びることを決意する。

しかし、安住の地を求めた土佐に到着するやいなや、信吾は官憲に捕らえられてしまう。失意の底に沈むあやを励まし支えたのは、地元の漁師である中森茂造だった。茂造には良作という息子がいたが、彼は時折村に姿を見せるものの、どこか秘密めいた雰囲気を持っていた。あやは中森家で茂造の鰹節作りを手伝いながら生活を立て直そうとする。良作はそんなあやのひたむきさに心を惹かれ、やがて二人は結ばれる。良作は一見、仕事に打ち込む誠実な青年だったが、裏では政治運動に関与しているという危険な一面を抱えていた。束の間の平穏な生活も長くは続かず、茂造が病に倒れ亡くなった後、警察の追及が良作に迫る。

追われる身となったあやと良作は、山奥の紙漉き小屋へと逃げ込む。そこで二人は身を隠しながら紙漉きを行い、子供たちに読み書きを教えるなど、ひっそりと暮らす。しかし、東京から執拗に追ってきた刑事に発見され、良作は山中を逃走する途中で命を落としてしまう。再び天涯孤独となったあやは、近くの尼寺の蓮照尼に救いを求め、身の上を相談する。実は、この蓮照尼こそがあやの生き別れた実の母親であった。

主演の井沢あや役には、当時の人気CMで注目を浴びた新人女優・宮崎美子が抜擢された。宮崎は熊本大学在学中に「週刊朝日」の表紙を飾り、篠山紀信撮影のミノルタ一眼レフカメラのCMに出演して社会現象となるほどの反響を得ていた。プロのモデルにはない自然な魅力や、ふっくらとした健康的な体型が新鮮なインパクトを与え、斉藤哲夫が歌うCMソングもヒット。CMのイメージキャラクターを務めたミノルタ「X-7」はベストセラーとなった。新人女優の登竜門として知られていた『ポーラテレビ小説』は、この話題の人物を主役に据えようと画策。担当ディレクターが熊本まで何度も足を運び、出演交渉を行ったという。この交渉がミノルタ側に事前の通達なく進められたため、後にミノルタからクレームが入るという一幕もあった。宮崎のドラマデビューは大きな注目を集め、マスコミ取材は200社以上、スポーツ新聞でも取り上げられるなど、異例の扱われ方であった。ドラマの放送に連動して、宮崎の写真集も発売されている。

物語の鍵を握る人物として、あやの兄・井沢信吾を石田純一、父・精庵を仲谷昇、母・杉を柳川慶子、使用人の大村海之助を伊藤敏八が演じた。あやの夫となる中森良作には小倉一郎、その父・茂造を伴淳三郎が演じるなど、ベテランから若手まで個性豊かな俳優陣が出演した。主演の宮崎とライバル的な役柄で共演した原日出子は、翌年のNHK連続テレビ小説の主演に抜擢され、ブレイクのきっかけを掴んだ。

本作の音楽は、後に「ドラゴンクエスト」シリーズで知られる作曲家・すぎやまこういちが手掛けた。NHK交響楽団の徳永二男、堀正文といった著名なヴァイオリニストを迎え、クラシカルな弦楽曲で作品全体の雰囲気を統一している。当時のドラマ音楽としては珍しく、サウンドトラックのレコードが発売されたことも特筆される。主題歌はシンガーソングライターの吉田拓郎が、ドラマのために書き下ろした同名の楽曲「元気です」。

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