元頊

元頊（げん ぎょく、502年 - 530年）は、中国南北朝時代の北魏の皇族で、東海王に封じられました。字は宝意（ほうい）。北海王である元詳（げんしょう）の子として生まれ、北魏において重要な地位を歴任しました。

当初、元頊は通直郎（つうちょくらん）という官職に就き、その後、中書郎（ちゅうしょろう）に転じました。さらに、武衛将軍（ぶえいしょうぐん）、光禄少卿（こうろくしょうけい）、黄門郎（こうもんろう）といった役職を歴任し、着実にキャリアを重ねていきました。地方では、平北将軍（へいほくしょうぐん）・相州刺史（そうしゅうしし）として派遣され、その地を治めました。その後、洛陽に召還され、大宗正卿（だいそうせいきょう）という皇族を統括する重要な役職に就任し、平楽県開国公（へいらくけんかいこくこう）に封ぜられました。

528年、元頊は侍中（じちゅう）・車騎将軍（しゃきしょうぐん）に任じられ、東海王に封ぜられました。これは彼にとって大きな転機であり、皇族としての地位をより強固なものとしました。その後も、中書監（ちゅうしょかん）・左光禄大夫（さこうろくたいふ）に転じ、尚書右僕射（しょうしょゆうぼくや）を兼任するなど、重要な役職を歴任しました。さらに、車騎大将軍（しゃきだいしょうぐん）となり、侍中（じちゅう）の位を加えられました。しかし、元頊は必ずしも政治的な才能に恵まれていたわけではなく、皇族としての出自から、若くして重い地位に就くことができたと言えるでしょう。

元頊の兄である元顥（げんこう）が、南朝梁の軍勢を率いて洛陽に侵攻した際、元頊は得意満面であったと伝えられています。しかし、その様子は周囲の人々の失笑を買うほどであったとされています。元顥の軍勢が最終的に敗北すると、元頊もその責任を問われ、告発を受けて捕らえられました。そして、530年9月4日、洛陽の市で斬首刑に処されました。

元頊の死後、532年には、侍中（じちゅう）、都督雍華岐三州諸軍事（ととくようかきさんしゅうしょぐんじ）、驃騎大将軍（ひょうきだいしょうぐん）、太尉公（たいいこう）、尚書令（しょうしょれい）、雍州刺史（ようしゅうしし）の位が追贈されました。これは、彼のこれまでの功績を考慮したものでしょう。妃である胡氏（こし）とともに、山陵に合葬されました。

元頊の子である元衍（げんえん）は、父の爵位である東海王を嗣ぎました。東魏の武定年間には、通直散騎侍郎（つうちょくさんきじろう）という官職に就いていました。しかし、北斉が建国されると、彼の爵位は降格されました。

元頊の生涯は、『魏書』や『北史』といった歴史書に記録されています。また、「魏故使持節侍中太尉公尚書令驃騎大将軍都督雍華岐三州諸軍事雍州刺史東海王墓誌銘（元頊墓誌）」という墓誌も残されており、彼の足跡を今日に伝えています。

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