尚書令

尚書令（しょうしょれい）

尚書令は、前近代中国の官職であり、尚書台、およびその後身である尚書省の長官を指します。

概要

成立と初期の役割

元々は単に尚書と呼ばれ、秦・漢の時代には宮中に詰め、皇帝の文書管理を行う秘書官でした。後漢に入ると、光武帝の親政に伴い、権力の中枢を担うようになり、独自の官衙である尚書台を従えるようになります。『漢官儀』によれば、上奏事を掌り、綱紀を統括し、一切を取り仕切る職掌を有し、司隷校尉・御史中丞と共に「三独座」と称される顕官となりました。

魏晋南北朝時代の発展

魏晋南北朝時代を通じて、詔勅の起草を司る中書令と共に地位を向上させ、部と呼ばれる実務執行機関を従えるようになりました（北周を除く）。官品も上昇を続け、魏から南斉の間は第三品、梁代には第十六班、陳では第一品にまで昇りました。一方、北朝では、北魏・北斉で正二品でした。

隋唐代

隋・唐代も北朝の制度を踏襲し、正二品とされました。ただし、隋代では、宰相相当の官である内史や納言よりも官品が上であったため、ほぼ空位で推移しました。

唐代の尚書省は、尚書令を長とし、中書省から発せられた詔勅に基づき、配下の六部を通じて政務を執行する最高官庁となりました。尚書令は宰相としての地位を確立しましたが、第2代太宗となる李世民が皇子時代にこの官職を務めていたことから、唐代を通じて皇太子のみが任じられる空官となり、次官である左右の僕射が代わりに宰相の座に就きました。尚書令は、龍朔3年（663年）に廃止されました。

宋代以降

唐末から北宋にかけて尚書省が形骸化したため、北宋では尚書令は官名のみが存在し、任命されることはありませんでした。南進して宋を南遷させた金では、再び尚書省が国政の中心的な機関となり、中書省の機能も尚書省に集約されたため、尚書令は王族などの有力者が任じられる首席宰相のポストとなりました。しかし、続く元では、金の尚書省にあたる機関に中書省の名が与えられたため、尚書令の官名は消滅しました。

尚書令は、時代と王朝によってその役割と重要性が大きく変化した官職と言えるでしょう。

参考文献

『通典』巻21
『文献通考』巻51
『続通典』巻26
『続文献通考』巻52

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