光岡・ライクT3

光岡自動車 ライクT3：革新的な3輪電気自動車の軌跡

光岡自動車が2012年から2022年まで製造販売していた「ライクT3（雷駆-T3、Like-T3）」は、ユニークな3輪構造を持つ小型電気自動車です。ユアサM&Bとの共同開発により誕生したこの車両は、都心部における短距離移動や小規模配送を主なターゲットとしていました。

車両の概要と特徴

ライクT3は、2名乗車可能なコンパクトな車体に、最大積載量100kgの荷台を備えています。シンプルながらも存在感のあるデザインは、企業や商店のロゴを効果的に表示できるよう考慮されており、商用利用を強く意識した設計です。

パワートレインは、定格出力3.0kWの電動モーターとリチウムイオン二次電池で構成され、後輪2輪を駆動します。最高速度は50km/hにリミッターが設定されています。モーターとバッテリーを荷台下に配置することで重心を後方に寄せることで、3輪車でありながら最大安定傾斜角42度という高い走行安定性を実現しています。

航続距離と充電時間はグレードによって異なり、「S」グレードが4時間で40km、「L」グレードが6時間で60kmです。いずれも家庭用100Vコンセントからの充電に対応しています。また、回生ブレーキを積極的に採用することで、アクセルオフ時の減速を強化し、ブレーキシステムの摩耗軽減にも貢献しています。グレードは「S」「L」「S+」「L+」の4種類が用意され、「+」が付くグレードにはフロントスクリーンが標準装備されていました。

法規制上の扱いと補助金

ライクT3は、乗車定員2名、最大積載量100kgの仕様で、排気量250cc以下の側車付軽二輪車として型式認定を取得しています。しかし、後輪2輪駆動という特殊な構造から、通常の側車付軽二輪車とは異なる法令上の扱いを受けました。運転には普通自動車免許以上が必要で、ヘルメット着用義務はありません。保険は250ccスクーターと同等の扱いとなります。

特筆すべきは、経済産業省の「クリーンエネルギー自動車導入促進対策費補助金」の対象車両であったことです。最大30万円の補助金が受けられたため、最廉価グレードのSは実質価格が100万円を下回るという価格設定も実現しました。型式認定取得には、経済産業省と国土交通省との間で約1年にわたる交渉が必要だったという経緯があります。

試験導入と佐川急便

発売に先立ち、SGホールディングスグループのSGモータースが先行試験導入を行いました。佐川急便での小口配達業務に投入され、そのデータは光岡自動車へのフィードバックに活用されました。SGモータースは、環境負荷低減と経費削減を目的に、廃車となった軽車両をベースとした電気自動車開発にも取り組んでいましたが、車両ごとの設計変更によるコスト高から頓挫しており、ライクT3への期待は大きかったのです。

SGモータースは、ライクT3を佐川急便仕様にカスタマイズした専用車両も開発しました。軽量なアルミボディに、キャノピーと左サイドオープンの荷台が特徴的です。データ収集は約1年間行われ、保安基準や集配効率に関するデータが収集されました。

まとめ

ライクT3は、その独自の3輪構造と電気自動車としての環境性能、そして小規模配送への適合性から、注目を集めた車両でした。しかし、生産終了によってその短い歴史に幕を閉じました。革新的な試みとして、今後の電気自動車開発においても、ライクT3の技術や経験は貴重な財産となるでしょう。

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