兎粘液腫

兎粘液腫（うさぎねんえきしゅ）について

概要

兎粘液腫は、ミクソーマウイルスによって引き起こされるウサギの感染症です。この病気は日本においても届出伝染病として認識されており、特にアナウサギが多く影響を受けます。このウイルスはポックスウイルス科に属し、主にウサギノミなどの節足動物によって媒介されます。残念ながら、現在のところ有効な治療法は存在しません。

感染の対象種

この感染症は主にアナウサギに見られ、致死率が非常に高いのが特徴です。イギリスでは、ヤブノウサギやユキウサギにも感染の例がありますが、これらの種への影響は限定的です。ウイルスの元の根源は中南米にあり、この地域に生息するワタオウサギはウイルスに対する免疫を持っているため、感染しても症状は軽微です。しかし、ヨーロッパのアナウサギにとっては非常に危険な病気です。

症状

ミクソーマウイルスによる感染が確認されると、通常1週間以内に様々な症状が現れます。主な症状としては、発熱や結膜炎、さらには鼻、耳、肛門、生殖器周辺の皮膚に特徴的なゼラチン様の腫瘤が形成されます。この腫瘍は膿を持ち、ウサギの目や耳を塞いでしまうことがあります。感染から11日から15日で死亡することが多く、致死的な病気です。

致死率と免疫・耐性

イギリス

イギリスでは、アナウサギのミクソーマウイルスによる致死率は非常に高く、1963年に初めて導入された際には99.99%に達しました。しかし、その中で生き残ったわずかなオスは免疫を獲得し、以後感染することはありません。この免疫は母体から受け継がれることもありますが、出生した幼獣の免疫は一時的なものであると考えられています。さらに免疫が有効な時期に感染すれば新たに免疫を得られますが、ウイルス自体も変化し、弱毒化することが観察されています。その結果、1980年代には致死率が40%から60%に減少しました。

オーストラリア

オーストラリアにおいても、1950年にミクソーマウイルスが導入され、致死率は99%に達しました。その後、ウイルスが変異し、弱毒化し、さらにアナウサギも耐性を持つようになりました。これにより、致死率は50%にまで低下しました。ミクソーマウイルスは宿主のアナウサギを維持するため、一定の強毒性を持った状態で残ります。

用途

兎粘液腫の原因となるミクソーマウイルスは、生物農薬としての利用が考えられています。特に害獣駆除の手段として重要な役割を担っています。

まとめ

兎粘液腫は、特にアナウサギに対して致命的な影響を与える感染症です。イギリスやオーストラリアにおける歴史的な問題や、ウイルスの進化、そして動物間の免疫獲得のメカニズムなどについても多くの研究が進められています。今後もこの病気に関する理解を深め、効果的な管理策を模索していくことが求められます。

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