児玉花外

児玉花外：情熱の詩人、その生涯と作品

児玉花外（こだま かがい）は、明治7年（1874年）に京都で生まれ、昭和18年（1943年）に69歳で没した詩人です。本名を児玉伝八といい、詩人の児玉星人を異母弟に持ちます。初期には社会主義的な詩を発表し、その後は愛国的な詩を多く手がけたことから、「熱血詩人」と呼ばれました。また、現在も歌い継がれている『明治大学校歌』の作詞者としても知られています。

生い立ちと学問

花外は、京都の室町通で旧長州藩士の家に長男として生まれました。同志社予備校、同志社普通学校を経て、新島襄が校長を務めていた東華学校へ。その後、札幌農学校予科に進みますが、本科へは進まず中退。東京専門学校（現・早稲田大学）文学部では坪内逍遙の影響を受け、バイロンやシェリーなどの詩に親しみますが、こちらも中退して京都に戻ります。

社会主義詩人として

京都に戻った花外は、内村鑑三の影響を受け、『東京独立雑誌』や『労働世界』といった雑誌に詩を発表。1899年には初の詩集『風月万象』を出版し、この頃から「花外」という雅号を使用するようになります。しかし、1903年に出版した第二詩集『社会主義詩集』が発売禁止処分を受け、1907年には第四詩集『天風魔帆』も同様の処分を受けます。理由は定かではありませんが、社会主義的な内容が問題視されたと考えられています。

作風の変化と晩年

相次ぐ発売禁止処分後、花外は社会主義的な作品から離れ、『冒険世界』や『武侠世界』などの雑誌に英雄詩や勇壮詩を寄稿するようになります。しかし、生活は困窮し、体調を崩して救護法の適用を受けることもありました。この時期に作詞した『明治大学校歌』は、現在も多くの人に歌われ、彼の代表作の一つとなっています。

晩年は東京養育院に入所していましたが、明治大学の関係者や学生たちが慰問に訪れました。学生たちがマンドリンオーケストラの演奏に合わせて明治大学校歌を合唱すると、花外は感激のあまり涙を流したと言われています。昭和18年（1943年）9月20日、急性腸炎のため69歳で亡くなりました。晩年は日蓮宗を信仰し、心の支えとしていたそうです。

『社会主義詩集』のその後

発売禁止処分を受けた『社会主義詩集』は、ごくわずかに製本されたものが現存していました。しかし、古書コレクターの手に渡った後、警察に押収され、行方不明となってしまいます。そのため、幻の書籍として古書コレクターの間で知られていましたが、近年では現存していないと考えられています。なお、『社会主義詩集』は1949年に復刻され、現在では一部の詩を『日本プロレタリア文学大系』で読むことができます。

詩碑

昭和35年（1960年）、祖父のゆかりの地である山口県長門市の大寧寺に花外の詩碑が建立されました。

児玉花外は、その情熱的な詩風と波乱に満ちた生涯を通して、多くの人々に影響を与えた詩人です。

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