児玉誉士夫邸セスナ機特攻事件

児玉誉士夫邸セスナ機特攻事件

1976年3月23日、東京都世田谷区に位置する児玉誉士夫の私邸において、特異な自爆テロ事件が発生しました。この事件は、前野霜一郎という29歳の操縦士が運転する小型航空機が児玉邸に突入し、炎上し爆発したもので、後に「児玉誉士夫邸セスナ機特攻事件」として知られています。イベントの背後にある動機やその後の影響についても掘り下げていきます。

事件の詳細

事件は午前9時50分頃、前野が操縦するPA-28-140型機（機体記号：JA3551）が児玉邸に突入したところから始まります。児玉の邸宅は、敷地の南側にあった庭の白樺や樫の木をなぎ倒しながら、上空で約10回旋回してから、玄関の屋根と2階の一部に激突しました。突入の影響で、1階の玄関や茶室は全焼、居間や応接間も半焼しました。

児玉は事件発生時、2階の奥の部屋におり、秘書に助けられて無事でしたが、家政婦は火傷を負っています。事故機の操縦士、前野は機内で黒焦げの状態で発見され、その後の報道でも注目されることとなりました。

犯人とその動機

前野霜一郎は、当時日活ロマンポルノに出演していた俳優であり、事件に先立って児玉と対立していました。彼の動機は、右翼思想を持ちながらも児玉の利己的な行動に失望し、天誅を果たす決意を固めたことにあるとされています。

ロッキード事件に関連して児玉が起訴され、マスコミによりその悪行が明るみに出ると、前野は児玉を民族主義者としてではなく、「利権屋」と捉え、行動に出たと言われています。事件前に友人に計画を語ったことからも、彼の思惑が伺えます。

さらに、離陸前には神風特攻隊の服装を着用し、無線で「天皇陛下万歳」と叫んだ後に通信が途絶えるなど、彼の決意は確固たるものでした。

事件後の影響

警視庁は、この事件を前野の単独犯と結論付け、背後に組織的な関与は無いと発表しました。この自爆テロに対して、海外のメディアは「最後のカミカゼ」との表現を用いるなど、日本の右翼思想とテロの観点において興味深い視点を提供しました。

家屋の補修とその後の経済的影響

事件がもたらした物的被害は大きく、児玉は保険会社から約3000万から4000万円の保険金を受け取ることになりました。しかし、当時児玉の邸宅は脱税問題で差押えが行われており、保険金もその対象となるはずでした。東京国税局は、家屋の劣化を避けるため、修理費用用としてのみ保険金を扱うことにし、差押えを見送りました。

とはいえ、修理にかかる費用は総額6000万円前後と見積もられており、全てを賄えない状況に立たされました。この事件は、児玉にとって深刻なダメージをもたらしただけでなく、その後の彼の人生に多大な影響を与えました。

このように、児玉誉士夫邸セスナ機特攻事件はただの一件のテロ事件に留まらず、背景、動機、社会へのインパクトを問い直す重要な事件として位置付けられています。

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