児童税額控除 (イギリス)

児童税額控除（Child Tax Credit, CTC）について

イギリスの児童税額控除（Child Tax Credit、略称CTC）は、低所得家庭を支援するために設けられた公的制度です。この制度は、2003年4月に導入され、働いている中低所得者世帯に対し、税額控除として現金支給されます。他の福祉制度とは異なり、この控除は女王陛下の歳入関税庁（HMRC）から給付されます。

制度の背景と導入経緯

CTCの基盤には、ブレア政権下で進められた「welfare to work（福祉から就労へ）」の政策があり、これは労働市場への参加を促すために社会保障制度と税制の統合を目指しました。アメリカにおいて導入されている勤労所得税額控除（Earned Income Tax Credit）に倣い、特に低所得者世帯へのインセンティブを強化することを目的として、この制度が設けられました。1999年10月には就労家族税額控除と障害者税額控除も導入され、後にCTCが比較的簡素化された形で現行制度へと進化しました。

現在のCTCでは、16歳未満（フルタイムの教育や訓練を受けている場合は20歳未満）の子どもを持つ家庭が対象です。申請には、働いている場合の勤労者タックスクレジット（WTC）との併用も可能です。

支給条件と控除内容

CTCの申請ができるのは、主に16歳未満（教育を受けている場合は20歳未満）の子を持つ家庭であり、勤労者タックスクレジットの申請も可能です。申請者が要件を満たしている場合には、最大で以下の控除が支給されます。

• - 子供1人当たりの児童要素: 最大3,235ポンド（最大2人分）
• - 障害児1人当たり: 最大3,905ポンド
• - 重度事児1人当たり: 最大1,575ポンド

特に支給対象となる子供の条件には、特定の出生日や多産の状況が含まれます。また、従来存在した家族要素に伴う支給制度は廃止されており、現在は児童手当（Child Benefit）と併せた形で支援が行われています。

計算方法と支払い方法

CTCの控除額は、申請者の世帯構成と収入に基づいて計算されます。家庭に該当する要素を合算し、申請者の所得によって控除額が減額される仕組みです。具体的には、所得の境界値を設定し、そこから逓減が始まります。税額控除は主に、子供の保護者の口座に週単位または4週間ごとに支払われ、年度末までに支給されるシステムになっています。

現在の課題と将来的な展望

近年、CTCを含む様々な給付制度の複雑性が問題視されており、過誤受給や不正受給に関する課題も顕在化しています。2006年度には過剰給付の合計が14億ポンドに達し、その多くが誤った申告によるものでした。下院議会では、利用率の低さや複雑さ、過大・過少給付、低所得者への負担率の高さの問題が指摘されています。

2022年には、これらの制度を統合する施策が進められているものの、CTCとWTCの統合はまだ完了していません。改革の一環として、給付要件の見直しや制度の簡素化が進められており、今後の進展が期待されます。このように、CTCはイギリスの社会保障制度の中でも重要な役割を果たしているものの、制度の改善は急務であると言えるでしょう。

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