入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律

本法は、正式名称を「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」といい、公務員が関与する官製談合の発生を抑止し、再発を防ぐことを主な目的としています。

その長い名称から、一般には入札談合等関与行為防止法や官製談合防止法といった略称で知られています。法令番号は平成14年法律第101号で、2002年（平成14年）7月31日に公布され、翌2003年1月6日に施行されました。

法律の目的と内容

この法律は、公共事業などの入札や契約において、行政の職員が関与する談合行為を排除・防止するための多角的な措置を定めています。

主な内容としては、以下のようなものが挙げられます。

改善措置要求: 公正取引委員会が、各省各庁の長などに対し、入札談合等関与行為を排除するために必要な改善措置をとるよう要求する権限を有すること。
損害賠償請求: 入札談合等に関与した職員に対し、国や地方公共団体などが損害賠償を請求できること。
懲戒事由の調査: 当該職員の懲戒処分の原因となる事実について調査を行うこと。
関係機関の連携: 入札談合等関与行為の排除および防止に関し、関係行政機関が相互に連携し協力すること。
職員に対する罰則: 職員が公正な入札等を害する行為を行った場合の罰則規定。

「入札談合等関与行為」の定義

本法が対象とする「入札談合等関与行為」は、第2条第5項で具体的に定義されています。

これには、主に以下の４つの行為が含まれます。

談合を明示的に指示すること
特定の事業者を受注させる意向を表明すること
発注に関する非公開情報を外部に漏らすこと
特定の入札談合を幇助すること

適用される契約形式

この法律は、国や地方公共団体等が行う様々な契約に適用されます。

具体的には、以下の形態の契約が対象となります。

広く参加者を募る一般競争入札による契約
あらかじめ選定した事業者を指名する指名競争入札による契約
複数の事業者から見積もりを取り、価格を比較して決定する形式の随意契約（指名見積り合わせ）

職員に対する罰則

本法は、国の職員が、その所属する機関が行う契約の締結に関連し、入札等の公正を著しく害する行為を行った場合に罰則を設けています（第8条）。

罰則の対象となる行為としては、

事業者などに対して談合を唆すこと
事業者などに対して予定価格などの入札に関する秘密情報を教えること
その他、入札の公正を損なう行為

などが挙げられます。これらの行為を行った職員は、5年以下の懲役または250万円以下の罰金に処される可能性があります。

法律の沿革

本法が制定される契機となったのは、2000年に公正取引委員会が処分を行った北海道上川支庁の発注事業における談合事件でした。この事件を受けて官製談合への批判が高まり、2002年7月には与野党双方の議員立法として法案が提出され、同月に成立しました。

その後、2006年には福島県、和歌山県、宮崎県の知事が関与したとされる談合事件が司法により摘発されるなど、官製談合の根深さが改めて浮き彫りになりました。これを受け、同年12月には改正法が成立し、関与した職員に対する罰則規定の新設や、法律が適用される関与行為の範囲が拡大されました。改正法は2007年3月14日に施行されています。

注目された官製談合事件

この法律が適用されたり、その制定や改正の背景となったりした事件には、以下のようなものがあります。

岩見沢官製談合事件（2002年）: 公取委の勧告に加え、市長が本法に基づき改善措置を要求された事例。
橋梁談合事件（2005年）: 日本道路公団の幹部が逮捕された事件。
緑資源機構談合事件（2007年）: 同機構の元理事が独占禁止法違反などで逮捕。
社会保険庁OB官製談合事件（2010年）: 日本年金機構職員らが本法違反で逮捕。
東京都豊洲新市場土壌汚染実験における談合疑惑（2011年）: 大手建設会社と都職員の共謀が指摘された事案。
* 国循官製談合事件（2014年）: 国立循環器病研究センターの元職員らが本法違反などで逮捕。

入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律