入江ゆき

入江ゆき（現姓：田中ゆき）

入江ゆき（いりえゆき、1992年 9月17日 - ）は、福岡県北九州市出身の日本の女子レスリング選手。結婚後の現在は田中姓を名乗っている。主に48kg級と50kg級で国内外の主要大会で活躍し、数々の栄冠を手にしてきた実力者である。

幼少期からアマチュア時代

レスリングを始めたのは5歳の時。兄の影響を受けてマットに上がり、幼少期は女子選手が少なかったため、主に男子選手と共に練習に励んだ。この経験が後の粘り強いレスリングスタイルを培ったと言えるだろう。

北九州市立横代中学校3年時には、全国中学生選手権の46kg級で頂点に立った。小倉商業高校へ進学後もその実力は揺るぎなく、全国高校女子選手権で二年連続優勝という快挙を達成した。

2011年に九州共立大学に進学後も勢いは止まらず、JOC杯ジュニアの部48kg級で二年連続優勝。さらに、全日本学生選手権では入学から卒業まで四連覇を達成するという圧倒的な強さを見せた。大学二年時には、世界ジュニア選手権と世界大学選手権という二つの世界タイトルを獲得し、国際舞台での才能を開花させた。

しかし、全日本選手権では、当時大学一年だった至学館大学の登坂絵莉に決勝で敗れ、準優勝となった。これは、それまで登坂に負けたことがなかった入江にとって、新たなライバルの出現を強く意識させる一戦となった。大学三年時も、全日本選抜選手権の決勝で再び登坂に苦杯を喫している。

社会人以降の活躍と強敵たちとの攻防

2015年、自衛隊体育学校に所属を移した。この年も全日本選抜選手権では世界チャンピオンとなっていた登坂に阻まれ準優勝に終わるが、アジア選手権では48kg級で見事金メダルを獲得し、国際大会での実績を積み重ねた。同年の全日本選手権では、当時中学一年ながら圧倒的な強さを見せていた安部学院高校の須崎優衣と対戦。10-0のテクニカルフォール勝ちを収め、UWWルールにおける須崎の連勝記録（83）を初めてストップさせたことは、レスリング界に大きなインパクトを与えた。

翌2016年の全日本選抜選手権では、決勝で須崎に敗れ雪辱を許したが、2017年の全日本選手権50kg級では、再び須崎と準決勝で激突。世界チャンピオンとなっていた須崎を相手に10-0のテクニカルフォール勝ちを収め、二年前の敗戦以降続いていた須崎の連勝記録（63）を再びストップさせるという快挙を成し遂げた。決勝でも勝利し、二年ぶり二度目の全日本選手権優勝を飾った。

2018年は国際大会で活躍を見せる。3月に高崎で開催されたワールドカップでは、団体戦の決勝・中国戦でリオデジャネイロオリンピック銅メダリストの孫亜楠にフォール勝ちするなど、日本チームの優勝に大きく貢献した。6月の全日本選抜選手権では、準決勝でリオデジャネイロオリンピック金メダリストの登坂を破る金星を挙げたが、決勝では須崎にフォール負けし準優勝。前年の全日本選手権優勝者として、世界選手権代表の座をかけ、今大会優勝者の須崎とプレーオフで対戦することになった。このプレーオフでは、試合終了間際までリードしていたものの、土壇場で逆転を許し、惜しくも世界選手権代表入りを逃した。直後の8月、アジア大会では決勝に進出するも敗れ、銀メダルを獲得。そして12月の全日本選手権では、再び登坂を破るなど安定した強さを見せ、二連覇を果たした。

2019年4月のアジア選手権では、決勝でリオデジャネイロオリンピック銅メダリストである地元中国の孫亜楠を再び破り、優勝。しかし、6月の全日本選抜選手権では、初戦で須崎に終了間際で逆転負けを喫するという波乱があった。これにより、再び世界選手権代表をかけて須崎とのプレーオフに臨むことになった。7月のプレーオフでは、須崎を相手に危なげない試合運びで勝利し、世界選手権代表の座を掴み取った。この大会には、非オリンピック階級ではあるが、妹のななみも代表に選出されており、姉妹揃っての世界選手権出場となった。9月の世界選手権本番では、準々決勝で再び孫と対戦するも僅差で敗れ、オリンピック代表権獲得はならなかった。同年末の全日本選手権決勝では、須崎に惜敗し準優勝に終わった。

結婚、そして怪我からの復活

その後、全日本選手権フリースタイル125kg級で優勝経験を持つ田中哲矢と結婚し、田中ゆきとして新たな道を歩み始めた。2020年6月には選手生命を脅かす前十字靭帯の断裂という大怪我を負い、長期の戦線離脱を余儀なくされた。しかし、約二年半のリハビリ期間を経てマットに復帰。2022年の全日本社会人選手権に出場し、見事優勝を飾り、その不屈の精神と実力を再び証明した。

人物

4人兄姉の長女。兄と二人の妹もレスリング経験者というレスリング一家に育った。特に次女のななみは2015年の世界ジュニア55kg級で優勝、三女のくみも2014年の世界カデット選手権56kg級で3位になるなど、姉妹揃って国際舞台での実績を持っている。

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