全インド統一民主戦線

全インド統一民主戦線 (AIUDF)

全インド統一民主戦線（AIUDF）は、アッサム州を中心に活動するインドの地方政党です。この党は、2006年にバドルディン・アジマルによって設立され、最初は「アッサム統一民主戦線」という名称でした。アジマルは香料の原料の輸出によって得た巨額の富を背景に「アッサムで一番裕福な候補者」として州議会選挙に臨み、初出馬にもかかわらず124議席のうち10議席を獲得する好スタートを切りました。

その後、AIUDFは党名を現在の形に改め、組織の整備を進めてさらなる発展を期待しました。2011年の州議会選挙では、議席を18まで増やし、第2党としての地位を獲得します。この選挙の結果を受けて、全インド国民会議派（INC）との連立や協力が噂されましたが、INCはこれを否定。結果として、AIUDFは州議会における最大野党の地位を得ることとなります。

さらに、2014年の連邦下院選挙では、全国的にインド人民党（BJP）が強かったにもかかわらず、AIUDFはアジマルが再選されたのに加え、2つの選挙区でも勝利を収め、合計で3議席を獲得しました。しかしながら、2019年の選挙では議席数が1に減少する結果となります。

イデオロギー

AIUDFは、自党のイデオロギーとして政教分離主義と反宗派主義を掲げており、「すべてのマイノリティと抑圧された人々の代表である」ことを目指しています。特に、ベンガル地域からの移民であるムスリムコミュニティからの支持が広く、そのため、移民排斥に反対する立場をとるINCの支持基盤を切り崩す要因となっています。

現在、アッサム州においてムスリム住民は総人口の25％を超え、西部や中部では過半数を占める地域も存在しているため、AIUDFにとってはこれが追い風となっています。2011年の州議会選挙では、ムスリムや移民排斥を掲げるアソム人民会議やBJPがともに大きな敗北を喫したことが、この状況を一層強調しています。また、2014年の連邦下院選挙でもAIUDFが発展を遂げたことがこの政党の存在感をアピールする要因となっています。

全体として、全インド統一民主戦線はアッサム州におけるマイノリティの権利を代表し、特にムスリム住民との連携を強化することで、今後の選挙においても重要な地位を占める可能性があります。また、同党の活動は、インドの多様な民主主義の中での地域政党の役割を示す重要な事例とも言えるでしょう。

参考文献

• - 木村真希子・執筆部分、広瀬崇子、北川将之、三輪博樹『インド民主主義の発展と現実』勁草書房、2011年。
• - 木村真希子・執筆部分、広瀬崇子、南埜猛、井上恭子編著『インド民主主義の変容』明石書店、2006年。

もう一度検索