全唐詩

『全唐詩』（ぜんとうし）は、清の康熙帝の勅命を受け、彭定求（ほうていきゅう）らが編纂した、唐代の詩を網羅的に収載した勅撰漢詩集です。900巻という膨大な量で構成され、目録12巻、補遺6巻、詞12巻が付随しています。

成立の背景と概要

1703年（康熙42年）に完成した『全唐詩』は、唐代の詩を可能な限り網羅することを目的として編纂されました。その規模は、作者数2,900余人、作品数4万8,900余首に及びます。

編纂にあたっては、明代の胡震亨（こしんこう）が著した『唐音統籤』『唐音癸籤』が底本として用いられ、内府に所蔵されていた『全唐詩集』が加えられました。さらに、残された碑文や断片的な記録、稗史、雑書などからも広く詩が採録されています。

日本への影響

『全唐詩』は江戸時代の日本に輸入されると、その内容の豊富さから大きな評判を呼びました。しかし、網羅を期したとはいえ、収録から漏れた詩も存在しました。そこで、市河寛斎（いちかわかんさい）は『全唐詩』に収録されていない唐詩を集め、『全唐詩逸』（ぜんとうしいつ）3巻を1804年（文化元年）に出版し、その不足を補っています。

構成

『全唐詩』は、以下のような内容で構成されています。

帝王后妃：皇帝や皇后の詩
楽章：宮廷音楽の歌詞
楽府：民間の歌謡
臣下の詩：臣下の者たちが作った詩
聯句：複数人で一句ずつ詠み継いで作る詩
逸句：詩の一部分だけが伝わっているもの
名媛：有名な女性の詩
僧道：僧侶や道士の詩
外国：外国人の詩
仙神：仙人や神に関する詩
鬼怪：妖怪に関する詩
諧謔：ユーモラスな詩
諸雑体：その他、様々な形式の詩（題語・判・歌・讖記・語・諺謎・謡・酒令・占辞・蒙求など）

参考文献

小川環樹編『唐代の詩人 その伝記』（大修館書店、1976年）：62名の唐詩人の伝記と原典訳を収録。
村上哲見『漢詩の名句・名吟』（講談社現代新書、1990年） ISBN 4-06-149026-5：漢詩の名句や名吟を紹介。

関連項目

康熙帝
文苑英華
唐詩選
三体詩
全唐文
全唐詩逸
唐詩三百首
* 阿倍仲麻呂

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