全国学力・学習状況調査

全国学力・学習状況調査について

全国学力・学習状況調査は、文部科学省が小学校と中学校の最高学年（小学6年生と中学3年生）を対象に、学力と学習状況を把握するために毎年実施する調査です。この調査は、教育施策の成果と課題を検証し、教育指導の改善に役立てることを目的としています。一般には「全国学力調査」や「全国学力テスト」とも呼ばれています。

調査の概要

この調査は、学力検査と学習・生活環境に関するアンケートで構成されています。体力・運動能力を測る「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」と並んで、児童生徒全体を対象とする大規模な調査です。

調査の歴史

全国規模の学力調査は、時代とともに形を変えて実施されてきました。戦後の学力低下を問題視した1947年から1955年には、地方自治体主導で調査が行われました。1956年からは国が主導となり「全国中学校一斉学力調査」が11回実施されましたが、過度な競争を招くという批判や、旭川学テ事件を契機に中止されました。

その後、1982年から抽出調査として学力調査が再開され、2000年代に入りPISA調査の結果が学力低下を浮き彫りにしたことから、全国学力・学習状況調査が2007年に復活しました。当初は悉皆調査（全数調査）でしたが、2010年に抽出調査に一時変更、2013年に再び悉皆調査に戻されました。

2027年度からは、オンライン形式での実施（CBT）に全面移行する方針が発表されています。

調査の目的

文部科学省は、この調査の目的を以下の通りに定めています。

1. 義務教育の機会均等とその水準の維持向上を図るため、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証すること。
2. 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善に役立てること。
3. 教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること。

調査の管轄

文部科学省が管轄し、国立教育政策研究所教育課程研究センターが問題作成や分析を担当しています。

調査形式

調査は毎年4月の第3または第4火曜日に実施されます。児童生徒と学校に対する質問紙調査も同時に行われます。教科は、算数・数学、国語、理科（3年に1回）、英語（2019年から）の4科目です。

調査の実施状況

初年度の2007年は、多くの公立・国立小中学校と一部の私立小中学校が参加しました。特別支援学校も一部条件付きで参加しています。自治体によっては、以前から独自の学力調査を実施しているところもあります。

2009年には全国の公立小中学校が初めてそろって調査を受ける形となりましたが、その後の政権交代による調査方式の変更など、変遷を経て現在に至ります。

調査に対する反対論

調査設計に関する批判

全国学力調査は、学力評価だけでなく指導にも役立てるという二つの目的を持つため、制度設計に問題があるとの指摘があります。悉皆調査の必要性や、専門家の知見が十分に活かされていない点が批判されています。

評価方法に関する批判

生徒の学力を正答率で評価することや、問題数が少ないために学力の解像度が低いことが問題視されています。また、IRT（項目応答理論）などの統計学的テスト理論を用いないことも課題として挙げられています。

悉皆調査（全数調査）に関する批判

悉皆調査は、公平性を保ちやすいと思われがちですが、不正行為を誘発する可能性があることや、学校現場の負担が大きいことが指摘されています。また、結果の公表が遅れるため、教育現場への迅速なフィードバックが難しいという問題点もあります。

結果公表に関する批判

調査結果が全公開されることで、問題の経年比較が難しくなるという指摘があります。また、結果が人事評価や学校評価に用いられること、マスコミによる誤った順位付けが行われることも問題視されています。調査結果がSES（社会経済的地位）に大きく影響されるにもかかわらず、その点が考慮されていないという批判もあります。保護者と教育委員会で結果公表に対する意見が異なることも問題点として挙げられています。

民間委託と個人情報に関する批判

調査が民間企業に委託されることや、個人情報の取り扱いに対する懸念の声も上がっています。過去の個人情報流出事件から、委託先の選定に対する疑問も呈されています。

政治的批判

日本教職員組合や日本共産党などは、学力格差を広げるとして調査に反対しています。過去の調査のように、地域間の競争が激化することや、予算配分に影響することを懸念しています。

調査の内容

調査対象

小学校第6学年と中学校第3学年が対象です。特別支援学校の小学部・中学部も含まれます。

教科に関する調査

国語、算数・数学、理科（3年に1度）、英語（2019年度から）が調査対象です。以前は国語と算数・数学で知識を問う問題と活用を問う問題に分かれていましたが、2019年度から統合されました。

調査内容

生活習慣や学校環境に関する質問紙調査も実施されます。

調査結果

年度別平均

調査結果は文部科学省から公表されています。

都道府県別平均点数（2007年）

2007年度の調査結果では、秋田県が小学校の国語、算数ともに高い正答率を示しました。中学校では、富山県、福井県などが上位にランクインしています。

まとめ

全国学力・学習状況調査は、教育の現状を把握し、改善につなげるための重要な取り組みです。しかし、その制度設計、評価方法、結果公表などについて、様々な批判や課題も存在します。これらの問題を解決し、より効果的な調査を目指していくことが求められています。

関連項目

学力検査
全国体力・運動能力、運動習慣等調査
OECD生徒の学習到達度調査 (PISA)
旭川学テ事件
教育再生会議
情報公開

外部リンク

全国的な学力調査（全国学力・学習状況調査等） - 文部科学省
格差が固定化？ 2008年全国学力テスト - All About
* どう読む？ 文科省の全国学力テストの結果 - All About

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